「佐藤君、悪いけど明日2トントラック借りて荷物運んどいて。普通免許で大丈夫だろ?」
上司にそう軽く言われて、あなたは今、戸惑っていませんか?
自分の免許証をまじまじと見つめ、「準中型車は5tに限る」なんていう複雑な記載を前に、「もし無免許運転になったらどうしよう……」と不安が込み上げているはずです。
正直に言います。
現場で「2トントラック」という言葉を鵜呑みにするのは今日で終わりにしましょう。
多くの人が「2トン=最大積載量」だと思っていますが、警察や法律が見るのはそこではありません。
大事なのは「車両総重量(GVW)」です。
ここを見誤ると、あなたは知らぬ間に「無免許運転」という、取り返しのつかない過ちを犯すことになります。
この記事では、運送業界で20年、数多くの新人ドライバーを指導してきた私が、あなたの免許証と目の前のトラックが「法的に白か黒か」を3分で判定できるよう解説します。
[著者情報]
執筆・監修:運行管理者・高橋
物流コンサルタント(元・大手運送会社フリートマネージャー)。延べ500名以上のドライバーへの免許指導と車両管理を行い、20年間事故・違反ゼロを継続。「現場のルールを世界一わかりやすく」がモットー。
あなたの免許証を確認!「2トントラック」を運転できる3つの境界線
まずは、お手元に免許証を用意してください。
チェックすべきは「種類」の欄ではなく、「免許を取得した日」です。
日本の道路交通法は2007年と2017年に大きく改正されており、あなたがいつ免許を取ったかによって、運転できる「2トントラック」の範囲は180度変わります。
「普通免許だから2トンまでは大丈夫」という思い込みが、最も危険な無免許運転への入り口です。
以下の3つの区分のうち、あなたはどこに当てはまるでしょうか?
- 2007年(平成19年)6月1日以前に取得した方
あなたの免許は、現在の「中型免許(8t限定)」扱いです。車両総重量8t未満まで運転できるため、世の中のほぼすべての2トントラックを安心して運転できます。 - 2007年6月2日〜2017年3月11日に取得した方
あなたの免許は「準中型免許(5t限定)」扱いです。車両総重量5t未満まで。標準的な2トントラックなら運転可能ですが、少し大きな「ロング車」や「箱車」になると、5tの壁を越えてしまうリスクがあります。 - 2017年(平成29年)3月12日以降に取得した方
ここが最大の警戒ゾーンです。 あなたの普通免許で運転できるのは、車両総重量3.5t未満まで。実は、いわゆる「2トントラック」のほとんどが運転できません。
なぜ「2トン車」なのに普通免許で乗れないのか?知っておくべきGVWの罠
「2トントラックなんだから、2トンまでは普通免許でいいじゃないか」と思いますよね。
ここに大きな罠があります。
法律が制限しているのは、積める荷物の重さ(最大積載量)ではなく「車両自体の重さ + 最大積載量 + 乗員」をすべて合計した「車両総重量(GVW)」なのです。
例えば、いすゞのエルフ(2t積・標準平ボディ)の場合、最大積載量は確かに2.0tですが、車両重量が約2.4tあります。
これに人間が乗ると、車両総重量(GVW)は約4.6t〜4.8tになります。
ここでエンティティの関係性を整理しましょう。
- 免許取得日が、あなたの運転可能なGVWの上限を決定します。
- 車両形状(平ボディか箱車か)が、車両総重量(GVW)を左右します。
つまり、2017年以降に免許を取った人の上限は3.5tですから、GVWが4.6tある標準的な2トントラックを運転した瞬間、法的には「大型バイクの免許で大型バスを運転している」のと同じくらいの重い違反(無免許運転)になってしまうのです。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: レンタルする際は、必ず「箱車(アルミバン)」や「パワーゲート付き」を避けるか、徹底的にGVWを確認してください。
なぜなら、荷台が箱型になっている車両や、重い昇降機(パワーゲート)がついている車両は、それだけで車両重量が500kg以上重くなるからです。2007年〜2017年取得の「5t限定」免許の人は、平ボディならセーフでも、箱車になった途端にGVWが5.1tになり、アウトになるケースが現場で多発しています。
【逆引き】免許別・運転可能な2トントラック代表モデル一覧
では、具体的にどのトラックなら借りていいのでしょうか?
主要メーカーの代表的なモデルと、免許の適合関係をまとめました。
車両総重量(GVW)と免許区分の関係性を、この表で照らし合わせてください。
📊 比較表【免許区分別・2トントラック適合マトリックス】
| 車両クラス | 代表モデル例 | 車両総重量(GVW)目安 | 2017年以降普通(3.5t未満) | 2007-2017年普通(5t未満) | 2007年以前普通(8t未満) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1.5tクラス | エルフ1.5t / キャンターガッツ | 3.3t 〜 3.45t | ○ 運転可能 | ○ 運転可能 | ○ 運転可能 |
| 2t標準・平 | エルフ / デュトロ / キャンター | 4.6t 〜 4.9t | × 運転不可 | ○ 運転可能 | ○ 運転可能 |
| 2tロング・平 | 各社ロングボディ仕様 | 4.9t 〜 5.3t | × 運転不可 | △ 要確認 | ○ 運転可能 |
| 2tアルミバン | 各社箱型(バン)仕様 | 5.1t 〜 5.8t | × 運転不可 | × 運転不可 | ○ 運転可能 |
※スペックは架装(荷台の仕様)により変動します。必ず車検証の「車両総重量」を確認してください。
失敗しないための手配術:レンタカー屋さんに伝えるべき「魔法の言葉」
ここまで読んで、「自分の免許じゃ2トン車は無理そうだ……」と落ち込む必要はありません。
大切なのは、レンタカー会社に対して「自分の免許の限界」を正確に伝えることです。
上司に「2トン借りてこい」と言われたからといって、そのまま「2トン車ください」と言ってはいけません。
以下のスクリプト(台本)を使って電話してみてください。
【2017年以降に免許を取った人の場合】
「明日、トラックを1台借りたいのですが、私の免許が『現行の普通免許(3.5t未満限定)』なんです。2トン車だと重すぎると思うので、車両総重量が3.5t未満に収まっている『1.5tクラス』か『軽量仕様の2t車』は在庫ありますか?」
【2007年〜2017年に免許を取った人の場合】
「『5t限定の準中型免許』で運転できるトラックを探しています。車両総重量(GVW)が5.0t未満であることを確認していただけますか? 特に箱車を希望していますが、5tを超えないモデルをお願いします。」
このように、「車両総重量(GVW)」という言葉を出すだけで、店員さんは「この人はわかっているな」と判断し、絶対に無免許運転にならない車両を選んでくれます。
まとめ:法規を守って安全な配送を!
「2トントラック」という言葉の裏には、免許制度の複雑な罠が隠されています。
しかし、今日ここで学んだ「車両総重量(GVW)」という基準さえ持っていれば、もう何も怖くありません。
最後に、明日ハンドルを握る前の最終チェックリストです。
- [ ] 免許証の「取得日」を確認し、自分のGVW上限(3.5t / 5t / 8t)を把握したか?
- [ ] 借りる車両の「車検証」または「ドア付近のステッカー」で車両総重量を確認したか?
- [ ] 上司の「大丈夫」ではなく、法律の「数字」を信じたか?
正しい知識は、あなた自身と、あなたの会社を守る最強の盾になります。
自信を持って、安全運転で行ってらっしゃい!
[参考文献リスト]
1. 準中型免許の新設について – [警察庁](https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/menkyo/juntyuugata.html)
2. 自動車の区分について – [国土交通省](https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk1_000006.html)
3. 主要諸元表(エルフ) – [いすゞ自動車](https://www.isuzu.co.jp/product/elf/spec/)
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