「また、〜」「また、〜」……。
大切なクライアントへの提案メールを書き終え、読み返した瞬間に手が止まる。
文頭に並んだ「また」の文字を見て、「なんだか小学生の作文みたいだな」と、自分の語彙力のなさに不安を感じてはいませんか?
送信ボタンを押すのをためらってしまうその感覚は、実はあなたがプロフェッショナルとして成長しようとしている証拠です。
結論から言えば、ビジネスメールで「また」を連発しないコツは、単なる言葉の置き換えだけではありません。
大切なのは、情報を整理する「構造化」の視点を持つことです。
この記事では、今すぐ使える文脈別の言い換えリストに加え、接続詞に頼らずに知的な文章を作るプロの技術を伝授します。
読み終える頃には、自信を持って送信ボタンを押せるようになっているはずです。
[著者情報]
田中 健司(たなか けんじ)
ビジネスコミュニケーション・アドバイザー / 元外資系戦略コンサルタント
外資系コンサルティングファームにて、論理的な文章術を徹底的に叩き込まれる。現在は独立し、延べ1万人以上の若手社員に「伝わるビジネスライティング」を指導。著書『一瞬で信頼を勝ち取るメールの技術』は、文章に悩む若手ビジネスパーソンのバイブルとなっている。
なぜ「また」が続くと幼稚に見えるのか?読み手が受ける印象の正体
「語彙力がないから、文章が幼稚に見えるのでしょうか?」
私が研修で若手社員の方から最も頻繁に受ける質問の一つです。
かつての私も、報告書を書くたびに同じ悩みを抱えていました。
上司から「君の文章は、情報の優先順位がついていないから読みにくいんだ」と指摘されたとき、ようやくその正体に気づきました。
「また」という言葉は、非常に便利です。
新しい情報を付け加えるとき、深く考えずに文頭に置くだけで文章が繋がってしまいます。
しかし、読み手の視点に立つと、「また」の多用は「情報の整理を放棄している」というサインに映ります。
情報をただ羅列しているだけなのか、それとも重要な補足なのか。
その区別がないまま「また」で繋がれた文章は、読み手に「この送り主は思考が停止しているのではないか」という、プロ意識への疑念を抱かせてしまうのです。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「また」が3回続いたら、それは語彙力の問題ではなく「情報の整理不足」だと判断してください。
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちですが、接続詞は「文章を繋ぐもの」ではなく「論理を示すもの」だからです。思考の変化として、私は「また」を疑うようになってから、格段にメールの返信率が上がりました。この知見が、あなたの成功の助けになれば幸いです。
文脈別:「また」をプロの表現に変える言い換えリスト
「また」を適切な言葉に置き換えるためには、その一文が前の文章に対してどのような役割を持っているかを判断する必要があります。
「また」には大きく分けて「添加」「並列」「補足」の3つの役割があります。
これらを使い分けるだけで、文章の知的な印象は劇的に変わります。
【文脈別「また」の言い換え表現とニュアンスの差】
| 文脈(役割) | 言い換え表現 | ニュアンスと使い分けのポイント |
|---|---|---|
| 添加(さらに追加) | 加えて / あわせて / さらに | 前の文を受けて、さらに重要な情報を乗せる際に使用。「あわせて」は汎用性が高く丁寧です。 |
| 並列(対等に並べる) | および / ならびに | 複数の項目を対等に扱う際に使用。文頭よりも、名詞を繋ぐ際に使うとスマートです。 |
| 補足(付け足し) | なお / ちなみに | 本筋とは少し離れた情報を添える際に使用。「ちなみに」は口語的なので、社外メールでは「なお」が安全です。 |
例えば、提案内容に加えて納期を伝えるなら「あわせて、納期についても……」とし、別の資料を添付するなら「なお、詳細は添付資料を……」と使い分けるのが正解です。
【UVP】言い換えよりも効果的!「また」を消し去る3つの文章構成術
単なる単語の置き換え以上に強力なのが、文章の構造そのものを変える技術です。
「また」と「箇条書き」は、実は代替関係にあります。
情報を構造化することで、接続詞そのものを不要にする方法を3つ紹介します。
1. 箇条書きへの変換
3つ以上の情報を伝える場合、すべてを「また」で繋ぐのは避けましょう。
- Before: 〇〇の件を承知しました。また、資料を送付します。また、会議の日程も調整願います。
- After: 〇〇の件、承知いたしました。以下の2点について、ご確認をお願いできますでしょうか。
- 資料の送付
- 会議日程の調整
2. 一文への統合
「〜ですので、また〜します」という二つの文を、「〜ですので、〜いたします」と一つにまとめます。
これにより、接続詞を介さずに論理を繋ぐことができます。
3. 接続詞の完全削除
実は、前後の文脈が明確であれば、接続詞がなくても意味は通じます。
不要な「また」を削ることで、文章にリズムと力強さが生まれます。

Q&A:目上の人に「なお」や「ちなみに」は失礼?
最後に、現場でよく迷うマナーについてお答えします。
Q. 「なお」は目上の人に使っても大丈夫ですか?
A. はい、問題ありません。ただし、「なお」は「付け足し」のニュアンスが強いため、重要な決定事項を「なお」の後に書くと、相手に「ついでに言った」ような印象を与える恐れがあります。重要なことは本文で述べ、補足的な連絡事項に留めるのがマナーです。
Q. 「ちなみに」をメールで使ってもいいですか?
A. 社外や目上の人へのメールでは避けたほうが無難です。「ちなみに」は口語(話し言葉)に近い表現です。ビジネス文書では「あわせて」「補足いたしますと」といった表現に置き換えることで、より知的な印象を与えることができます。
まとめ: 「また」を減らせば、あなたの言葉はもっと届く
「また」の連続を避けることは、単なるマナーの問題ではありません。
それは、読み手の負担を減らし、情報を正確に伝えようとする「相手への敬意」そのものです。
- 文脈(添加・並列・補足)に合わせて言葉を選ぶ
- 3つ以上の情報は「箇条書き」で構造化する
- 不要な接続詞を削り、一文をシンプルに保つ
まずは今日送るメールの中から、1箇所だけでいいので「また」を別の表現に変えるか、箇条書きにリライトしてみてください。
その小さな積み重ねが、あなたの言葉を「プロの武器」へと変えていくはずです。
[参考文献リスト]
- 一般社団法人日本ビジネスメール協会「ビジネスメール実態調査2023」
- 文化庁「敬語の指針」
- 三省堂『類語新辞典』
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