「また『しかし』を使ってしまった……」
クライアント向けの重要な報告メールを読み返し、自分の文章の幼稚さに溜息をついたことはありませんか?
特に、一つのメールの中で「しかし、〜。しかし、〜。」と逆接が続いてしまうと、どれほど中身が素晴らしくても、読み手には「語彙力が乏しい」「論理が整理されていない」という印象を与えてしまいかねません。
こんにちは。
ビジネスライティング・コンサルタントの市川賢治です。
私はこれまで、延べ1万人以上のビジネスパーソンに文章指導を行ってきましたが、20代の若手プロフェッショナルが最初にぶつかる壁の一つが、この「接続詞への依存」です。
本記事では、単なる類語の羅列ではなく、ビジネスの現場で「今すぐ使える正解」と、プロが実践する「接続詞を削る技術」を伝授します。
この記事を読み終える頃には、あなたの文章は「論理的で配慮が行き届いている」という確かな信頼を勝ち取る武器に変わっているはずです。
[著者情報]
市川 賢治(いちかわ けんじ)
ビジネスライティング・コンサルタント。元経済誌副編集長。大手企業でのライティング研修や、社内文書ガイドラインの策定を専門とする。若手時代の「文章が稚拙」という挫折経験を糧に、本質的な知性を伝えるメソッドを確立。
なぜ「しかし」が続くと幼稚に見えるのか?3つの落とし穴
実は、かつての私も皆さんと同じ悩みを抱えていました。
経済誌の記者になりたての頃、私が書いた報告書は「しかし」のオンパレード。
当時の編集長から「君の文章は標識だらけの道路のようだ。
走りにくくて仕方がない。思考が止まっている証拠だ」と一喝されたのです。
なぜ「しかし」が続くと、文章の信頼性は低下してしまうのでしょうか。
そこには3つの落とし穴があります。
- 思考の停止: 前後の文脈を深く考えず、とりあえず「しかし」で繋いでしまうことで、論理の飛躍を言葉で誤魔化しているように見えてしまいます。
- 読み手への心理的負荷: 逆接は読み手の思考を一度ストップさせ、逆方向に引き戻すエネルギーを強いる言葉です。これが連続すると、読み手は無意識にストレスを感じます。
- リズムの欠如: 同じ接続詞の重複は、文章のリズムを単調にし、読み手に「稚拙な印象」を強く植え付けてしまいます。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「しかし」を連発していることに気づいたら、それは語彙力の問題ではなく「論理構成を見直せ」というサインだと捉えてください。
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちですが、接続詞は本来、文章の「骨組み」がしっかりしていれば最小限で済むものだからです。言い換えを探す前に、まず「この逆接は本当に必要か?」と自問する習慣が、知的な文章への第一歩となります。
【シーン別】「しかし」を言い換える最強のバリエーション
ビジネスシーンでは、相手との距離感や媒体によって、最適な言葉の「硬度(フォーマル度)」が異なります。
例えば、「しかし」と「しかしながら」は同じ逆接ですが、そのフォーマル度には明確な差があります。
状況に合わせてこれらを使い分けることが、プロとしての配慮を示すことに繋がります。
📊 比較表
【シーン別・逆接表現の最適使い分けマトリックス】
| シーン | 推奨される表現 | ニュアンス・特徴 |
|---|---|---|
| 社外メール(最上級) | しかしながら | 最もフォーマル。重厚で知的な印象を与える。 |
| 報告書・提案書 | 一方で / 対照的に | 単なる否定ではなく、多角的な視点(対比)を示す。 |
| 社内チャット・同僚 | とはいえ / そうは言っても | 相手の意見を一度受け止める「譲歩」の響き。 |
| 依頼・お断り | 恐れ入りますが | 逆接の前にクッション言葉を置き、摩擦を避ける。 |
特に、「しかし」を「一方で」に昇華させる技術は重要です。
これは単なる反論を「多角的な分析」に見せる効果があり、若手コンサルタントが「論理的である」と評価されるための強力な武器になります。
上級者のテクニック:接続詞を使わずに「逆接」を伝える構成術
競合する多くのライティング記事は「言い換え語」を教えるだけで終わりますが、真に知的な文章を目指すなら、さらに一歩進んで「接続詞を削る」という視点を持ってください。
接続詞の数と文章の信頼性は、実は負の相関関係にあります。
接続詞を減らし、文脈そのもので論理を伝えることで、文章にプロらしいリズムと説得力が生まれます。
具体的なリライト手法を見てみましょう。
- 手法1:一文にまとめる(接続助詞の活用)
- Before: 弊社は本案に賛成です。しかし、予算面での懸念が残ります。
- After: 弊社は本案に賛成ですが、予算面での懸念が残ります。
- 手法2:あえて接続詞を消す(事実の対比)
- Before: A案はコストが低いです。しかし、納期が長いです。
- After: A案はコスト面で優位性がある反面、納期には課題を抱えています。

FAQ:ビジネスの現場でよくある「逆接」の悩み
最後に、私の研修でよく受ける質問にお答えします。
Q1. 目上の人に「しかし」を使うのは失礼ですか?
厳密には間違いではありませんが、少し突き放したような、強い印象を与えてしまうことがあります。
文化庁の指針でも、相手への敬意を示す場では、より丁寧な「しかしながら」や、クッション言葉を添えた表現が推奨されています。
「しかし」は、前の事柄と相反する事柄を述べる際に使われるが、ビジネスの公的な場面や目上の人に対しては、より丁寧な「しかしながら」を用いるのが一般的である。
出典: 敬語の指針 – 文化庁, 2007年
Q2. 反論する時に角が立たないようにするには?
「おっしゃる通りです」「ご指摘の点は重々承知しております」といったクッション言葉と逆接表現をセットで運用するのがプロの作法です。
これにより、相手の意見を尊重しつつ、自分の主張を論理的に通すことができます。
まとめ:言葉が変われば、プロとしての信頼が変わる
「しかし」の連発を卒業することは、単なる語彙力の向上ではありません。
それは、読み手の負担を減らし、論理を研ぎ澄まそうとする「プロフェッショナルとしての姿勢」そのものです。
- 「しかし」の重複は思考停止のサインと心得る。
- 相手や媒体に合わせて「硬度」を使い分ける。
- 接続詞を「削る・まとめる」ことで文章のリズムを作る。
まずは次のメールで、1つだけで構いません。
「しかし」を「一方で」に変えるか、あるいは一文にまとめてみてください。
その小さな一歩が、あなたの文章に驚くほどの知性と信頼を宿らせるはずです。
自信を持って、送信ボタンを押してください。応援しています。
[参考文献リスト]
- 文化庁, 「敬語の指針」 (2007)
- 日経xTREND, 「伝わる文章の書き方」
- プレジデントオンライン, 「語彙力と信頼の関係」
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