従業員退職型倒産を防ぐ「0円の組織再建」|連鎖退職を今日から止める3つの緊急対策

[著者情報]

田中 誠(たなか まこと)
組織再建コンサルタント / 元・中小企業経営者
過去15年で100社以上の「連鎖退職危機」にある中小企業を救済。自身も2代目経営者として、かつて主要メンバーの半数が離職する危機を乗り越えた経験を持つ。「上からの指導者」ではなく、同じ痛みを経験した「戦友」として、現場で即実行できる泥臭い解決策を提示することを信条としている。

信頼していたリーダーが去り、それを追うように若手社員から退職願が届く。

昨日まで活気のあったオフィスが嘘のように静まり返り、残った社員の顔色を伺いながら「次は誰が辞めるのか……」と胃の痛む思いをされていませんか?

ネットニュースで目にする「従業員退職型倒産」という言葉が、他人事とは思えない。

求人を出しても応募はなく、賃金を上げる余裕もない。そんな絶望感の中にいるあなたに、まず伝えたいことがあります。

あなたの会社は、まだ救えます。

従業員退職型倒産を防ぐために必要なのは、多額の資金ではありません。

経営者であるあなたの「向き合い方」と「決断」一つで、今日から連鎖を止めることは可能です。

この記事では、私がかつて倒産寸前の危機から組織を立て直した経験と、100社以上の支援実績に基づいた「0円でできる組織再建ロードマップ」を公開します。


なぜ今「従業員退職型倒産」が急増しているのか?統計が示す残酷な真実

「人手不足だから仕方ない」と諦める前に、今起きていることの正体を正しく理解しましょう。

帝国データバンクの調査によれば、2024年上半期の人手不足倒産は過去最多ペースで推移しており、その中でも「従業員退職型」の深刻さが際立っています。

2024年1月〜6月の人手不足倒産は163件(前年同期比44.2%増)と、上半期として過去最多を更新した。なかでも、中核社員の離職が引き金となった「従業員退職型」は、小規模企業を中心に急増している。
出典:「人手不足倒産」動向調査(2024年上半期) – 帝国データバンク, 2024年7月5日

ここで重要なのは、「連鎖退職」と「従業員退職型倒産」は、明確な原因と結果の関係にあるということです。

1人のキーマンが辞めると、残された社員の業務負荷が物理的に増えるだけでなく、「この会社に未来はあるのか?」という心理的な不安が伝染します。

この不安が放置されることで、次の退職者が現れる。この「負の連鎖」の終着駅が、事業継続が不可能になる「倒産」なのです。

かつての私もそうでしたが、経営者はつい「外部環境(人手不足)」のせいにしたくなります。

しかし、統計が示しているのは、外部の要因以上に、「1人の退職をきっかけとした組織の動揺を食い止められなかった」という内部の課題なのです。


資金ゼロで今日から始める「連鎖退職ストップ・3ステップ」

では、資金力に限界がある中小企業が、どうやってこの連鎖を断ち切ればよいのでしょうか。

私が提唱するのは、お金を一切かけずに今日から始められる「3つの緊急対策」です。

ステップ1:緊急1-on-1(徹底的に「聴く」)

今すぐ、残ってくれた社員一人ひとりと対話の時間を持ってください。

これは評価面談ではありません。

目的は、彼らの中に溜まった「不安の膿」を出し切ることです。

「リーダーが辞めて、正直どう思っている?」「今、何が一番不安?」と、あなたの弱さも見せながら誠実に問いかけてください。

 

ステップ2:業務の断捨離(物理的に「減らす」)

「辞めた人の分も、みんなでカバーして頑張ろう」――この一言が、残った社員の心を折ります。

今やるべきは、業務の棚卸しです。

  • やめる: 実はなくても困らない報告書や会議。
  • 減らす: 過剰な品質確認や、頻度の高い定例作業。
  • 変える: 外注化や、ITツール(無料版で十分です)による自動化。
    経営者が「みんなの負担を減らすために、この仕事はもうやらなくていい」と宣言することが、最大の離職防止策になります。

 

ステップ3:情報の透明化(未来を「見せる」)

社員が辞める最大の理由は「不透明さ」です。

会社の財務状況が苦しいなら、それを正直に話し、その上で「どうやって立て直すか」のロードマップを共有してください。


経営者が陥る「やってはいけない」3つの致命的な間違い

パニック状態にある経営者は、良かれと思って「連鎖を加速させる行動」をとってしまいがちです。

以下の3点は、絶対に避けてください。

1. 無理な賃上げ提示(条件交渉)

「給料を上げるから残ってくれ」という引き留めは、一時しのぎにしかなりません。

それどころか、他の社員に「辞めると言えば給料が上がるのか」という不信感を与え、組織の規律を崩壊させます。

 

2. 「残ったメンバーで乗り越えよう」という精神論

具体的な業務削減案がないままの精神論は、社員には「過重労働の強制」としか聞こえません。

 

3. 辞めた人への犯人探し・恨み言

「あいつは恩知らずだ」といった言葉は、残った社員を冷めさせます。

「次は自分が言われる番か」と思わせるだけです。

📊 比較表
経営者の行動による組織への影響比較】

行動 短期的な結果 長期的なリスク 推奨される代替案
安易な賃上げ 一時的に離職が止まる 不公平感の蔓延、資金繰り悪化 業務負荷の軽減と役割の再定義
精神論での鼓舞 その場はまとまった風に見える 隠れた不満の蓄積、突然の離職 具体的で実現可能な再建計画の提示
情報の隠蔽 不安を煽らない(つもり) 憶測による不信感、連鎖退職 誠実な現状開示と対話の実施

よくある質問:今さら社員と何を話せばいいのか?

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 最初の言葉は「残ってくれて、本当にありがとう」だけで十分です。

なぜなら、経営者が「何を話そうか」と身構えているとき、社員はそれ以上に「自分たちは見捨てられるのではないか」と身構えているからです。立派な演説は不要です。あなたの「弱さ」と「感謝」を伝えることが、心理的安全性(社員が安心して意見を言える状態)を構築する第一歩になります。

Q: 社員から不満をぶつけられたらどうすればいいですか?

A: それは「最高のチャンス」です。不満が出るということは、まだ会社に期待している証拠です。反論せず、「教えてくれてありがとう。それは盲点だった。どうすれば改善できるか一緒に考えてほしい」と返してください。

 

Q: 業務を減らすと、顧客に迷惑がかかりませんか?

A: 倒産してサービスが止まることこそが、最大の迷惑です。今、優先すべきは「顧客」よりも「社員」です。事情を説明して納期を調整してもらう、あるいは一部の不採算案件から撤退する勇気を持ってください。


まとめ:「選ばれる会社」への再出発。残ってくれた社員こそが、あなたの宝だ

従業員退職型倒産という言葉に怯える必要はありません。

この危機は、あなたの会社が「古い体質」を脱ぎ捨て、社員に選ばれる「強い組織」に生まれ変わるための、手痛い、しかし必要なプロセスです。

今日、あなたがやるべきことは求人票を書くことではありません。

目の前にいる社員に声をかけ、彼らの不安を聴き、その肩の荷を少しでも軽くしてあげることです。

「この社長となら、もう一度やってみよう」

そう社員に思ってもらえた瞬間、連鎖退職の波は止まります。

あなたは一人ではありません。

今日の一歩が、あなたの会社を救う大きな転換点になることを信じています。


[参考文献リスト]

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