[著者情報]
執筆:海野 守(マリン安全コンサルタント)
1級小型船舶操縦士。釣歴25年のベテランアングラー。延べ1,000人以上の初心者に安全講習を実施し、現在は大手釣り具メーカーの安全基準アドバイザーも務める。「ルールは命を守るための味方」をモットーに、現場視点の安全情報を発信中。
「今度ボート釣りに連れて行くから、桜マーク付きのライフジャケットを持ってきてね」
友人からそう言われて、慌ててネットで検索していませんか?
「桜マークって何?」「タイプAとかDとか、種類が多すぎてどれを買えばいいか分からない……」と、検索窓の前で立ち止まってしまう方は少なくありません。
実は、私も昔、格安のライフジャケットで船に乗ろうとして、船長に「それは救命胴衣じゃない、ただのベストだ。
悪いが、そのままじゃ乗せられないよ」と厳しく怒られた苦い経験があります。
せっかくの休日、準備不足で船に乗れないなんて悲しいですよね。
結論からお伝えします。
友人のボート(小型船舶)に乗るなら、「桜マーク付きのタイプA」を選べば100%正解です。
この記事では、なぜ「タイプA」でなければならないのか、そしてあなたの釣行スタイルに最適な1着をどう選ぶべきか、マリン安全のプロである私がどこよりも分かりやすく解説します。
この記事を読み終える頃には、自信を持って「これだ!」という1着を手にしているはずです。
なぜ「桜マーク」がないとダメなのか?初心者がハマる法的義務の落とし穴
「浮けば何でも同じじゃないの?」と思うかもしれません。しかし、海の世界ではそうはいきません。
2018年2月から、小型船舶の乗船者にはライフジャケットの着用が全面的に義務化されました。
ここでいう「ライフジャケット」とは、国が定めた安全基準をクリアした「国土交通省型式承認品」を指します。
この承認を受けた製品にだけ刻印されるのが、通称「桜マーク」です。

もし、あなたが桜マークのない製品(例えば、Amazonなどで安く売られている海外製の浮力補助具など)を着用して船に乗った場合、それは「未着用」と同じ扱いになります。
ここで最も注意すべきは、罰則を受けるのはあなたではなく、船を出している「船長(あなたの友人)」であるという点です。
桜マークなしの着用は船長の違反点数となり、最悪の場合、友人の免許が停止されてしまうリスクがあります。
もちろん、最大の理由は「命を守るため」です。
海上保安庁のデータによれば、ライフジャケット着用者の生存率は非着用者の約5倍。
桜マークは、荒れた海でも確実にあなたを浮かせる性能があるという、国からの「命の保証書」なのです。
結論:ボート釣りなら「タイプA」一択。その理由と見分け方をプロが解説
ライフジャケットには「タイプA・D・F・G」といった区分がありますが、ボート釣りを楽しむなら「タイプA」一択だと覚えてください。
なぜなら、タイプAは「全ての航行区域」に対応している唯一のカテゴリーだからです。
船がどこまで沖に行くか、どのような海域を走るかによって必要なタイプは細かく決まっていますが、タイプAを持っていれば、日本国内のあらゆる海域・あらゆる船舶で法的義務をクリアできます。
友人のボートがどこへ向かうにせよ、タイプAなら「これ、うちの船で使えるかな?」と心配する必要は一切ありません。
では、どうやってタイプAを見分けるのか。製品の裏側にある「ラベル」を確認するだけです。
【実戦編】肩掛けvs腰巻き、どっちが正解?あなたの釣行スタイルに合わせた選び方
タイプAの桜マーク付きを選べば法的・安全面はクリアですが、次に悩むのが「形状」です。
最近主流の「自動膨張式」には、大きく分けて「肩掛け型」と「腰巻き型」があります。
どちらが優れているかではなく、「何を優先するか」で選ぶのがプロの視点です。
📊 比較表
【肩掛け型 vs 腰巻き型 徹底比較】
| 比較項目 | 肩掛け型(サスペンダー) | 腰巻き型(ウエストベルト) |
|---|---|---|
| 動きやすさ | キャスティング時に少し肩に干渉する | 最高。 上半身が完全に自由 |
| 安全性(落水時) | 最高。 意識がなくても顔が浮く | 泳げない人や意識不明時は姿勢が不安定 |
| 夏場の快適さ | 首周りが少し蒸れる | 快適。 装着していることを忘れる |
| おすすめの人 | 安全第一。初心者や泳ぎに不安がある方 | 動作重視。ルアーフィッシング等をする方 |
肩掛け型は、落水時に自動で膨らむと、浮き輪が首の周りをがっちりガードしてくれます。
たとえパニックになっても、あるいは意識を失っても、顔が水面から上を向くように設計されているため、安全面では最強です。
一方、腰巻き型は、キャスティング(竿を振る動作)を多用する釣りにおいて、肩周りの自由度が非常に高いのが魅力です。
ただし、落水時は浮き輪が胸のあたりまで上がってくるため、自分で姿勢を整える必要があります。
買って終わりじゃない!長く安全に使うための「3つのメンテナンス」
せっかく手に入れた「タイプA」も、いざという時に膨らまなければ意味がありません。
特に自動膨張式は、精密な機械であることを忘れないでください。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「ガスボンベの有効期限」をスマホの予定表に入れて、年に一度は必ずチェックしてください。
なぜなら、この点は多くの初心者が完全に見落としがちで、いざ落水した時に「ボンベが錆びていて作動しなかった」という事故が実際に起きているからです。また、車内などの高温多湿な場所に放置すると、センサーが反応して誤作動(勝手に膨らむ)することもあります。釣行後は真水で濡らした布で拭き、風通しの良い日陰で保管するのが、命を守る装備への正しい接し方です。
まとめ
友人のボート釣りに誘われたあなたが、迷わず選ぶべきライフジャケットの条件は以下の3点です。
- 「桜マーク(国土交通省型式承認)」が付いていること。
- あらゆる海域に対応できる「タイプA」であること。
- 安全重視なら「肩掛け型」、動きやすさ重視なら「腰巻き型」を選ぶこと。
正しい装備を身につけることは、自分を守るだけでなく、船長である友人への最低限のマナーでもあります。
これであなたも、マナーと安全を兼ね備えた立派なアングラーの仲間入りです。
不安ゼロの完璧な装備で、最高の釣行を楽しんできてください!
[参考文献リスト]
- ライフジャケットの着用義務拡大について – 国土交通省
- 海難の現況と対策(令和5年) – 海上保安庁
- 救命胴衣の区分と航行区域 – 日本小型船舶検査機構(JCI)
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