[著者情報]
佐藤 結衣(さとう ゆい)
色彩検定1級・パーソナルカラーアナリスト / ファッションライター
大手アパレルブランドの色彩監修や、延べ1,000人以上のパーソナルカラー診断を行う色のスペシャリスト。「色の知識を買い物の武器に」をモットーに、ECサイトでの失敗を防ぐ実践的な情報を発信中。
「ネット通販で『カーキ』のスカートを注文したのに、届いたのはどう見ても『茶色』……。私の認識が間違っているの?」
そんな経験はありませんか?
実は私も、色彩のプロになる前は、イメージしていた「緑色」とは違う「土のような色」が届いて、不良品ではないかと疑ったことが何度もありました。
結論からお伝えすると、あなたの感覚は決して間違っていません。
実は「カーキ」という言葉には、本来の定義である「茶色系」と、日本で定着した慣習的な「緑色系」という、2つの正解が存在しているのです。
この記事では、色彩の専門家である私が、なぜこのような混乱が起きるのかという「色の正体」を解き明かし、二度と通販で失敗しないための「プロの見分け方」を伝授します。
この記事を読み終える頃には、あなたは自信を持って自分にぴったりのカーキを選べるようになっているはずです。
なぜ「カーキ」は人によって色が違うの?緑と茶色が混在する理由
「カーキ」という言葉を聞いて、軍服のような「深い緑色」を思い浮かべる方は多いでしょう。
しかし、カーキの語源を辿ると、全く別の姿が見えてきます。
カーキ(Khaki)は、ペルシャ語で「土埃(つちぼこり)」を意味する「ハーク(khak)」に由来します。
19世紀半ば、インドに駐留していた英国軍が、白い制服が汚れで目立つのを防ぐため、現地の土を使って染め上げたのが始まりです。
つまり、本来のカーキは「土の色=くすんだ黄色や茶色」を指す言葉なのです。
では、なぜ日本では「緑色」がカーキとして定着したのでしょうか。
それは、第二次世界大戦後にアメリカ軍の軍服(オリーブドラブと呼ばれる緑系)が「ミリタリーカラー=カーキ」という大まかなカテゴリーで紹介され、ファッションとして広まったためです。
このように、本来の定義である「茶系」と、日本のファッションシーンで定着した「緑系」という、異なる2つの系統が「カーキ」という一つの名前で呼ばれていることが、混乱の最大の原因です。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「カーキ」という言葉を単一の色として捉えず、「色のカテゴリー名」だと考えるのが失敗を防ぐ第一歩です。
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、「カーキ=緑」という固定観念があるために、本来の茶系カーキを見た時に「色が違う」という拒絶反応が起きてしまうからです。私自身、この歴史的背景を知ってからは、ショップごとの「カーキの解釈」を冷静に観察できるようになり、買い物の失敗が劇的に減りました。
【JIS規格で判明】本来のカーキは「土の色」。オリーブとの決定的な違い
曖昧な色の世界に、公的な基準で一本の線を引いてみましょう。
日本の産業製品の基準を定めるJIS規格(JIS Z 8102)において、カーキ色は「くすんだ赤みの黄」と定義されています。
この定義からも分かる通り、公的な正解としてのカーキに「緑」の要素は含まれていません。
私たちが「緑色のカーキ」と呼んでいる色の多くは、正確には「オリーブドラブ」や「オリーブ」という別の名前を持つ色なのです。
カーキ(本来の定義)とオリーブ(緑系)は、色彩学上の「色相(色の種類)」が明確に異なります。
カーキは黄色やオレンジに近いグループに属し、オリーブは緑に近いグループに属します。
この違いを理解しておくだけで、通販サイトの商品説明を読み解く力が格段に上がります。
もう失敗しない!通販サイトの「カーキ」を正しく見抜く3つのチェックポイント
さて、ここからは実践編です。
通販サイトで「カーキ」と表記されている商品が、果たして「茶系」なのか「緑系」なのか。
プロが実際に行っている3つの判別ハックを公開します。
1. カラーバリエーションの「組み合わせ」を見る
その商品に、他にどんな色があるかを確認してください。
- 「ベージュ」「ブラウン」「キャメル」と並んで「カーキ」がある場合、そのカーキは「茶系(本来のカーキ)」である可能性が非常に高いです。
- 「モスグリーン」「ネイビー」「ブラック」と並んでいる場合は、「緑系(オリーブ)」を指していることがほとんどです。
2. 写真の「影」の色に注目する
商品写真の、生地が重なっている部分や脇の下などの「影」を見てください。
- 影の色が「黄色っぽく、温かみがある」なら、ベースは茶系です。
- 影の色が「青っぽく、または黒く沈んでいる」なら、ベースは緑系です。
これは、モニターの設定によって表面の色が違って見えても、色のベースとなる成分(演色性)が影に現れやすいためです。
3. レビュー欄で「キーワード検索」をする
購入者のレビューは宝の山です。レビュー内の検索窓で「茶色」「緑」という単語を打ち込んでみてください。
「思ったより茶色かった」「綺麗な深緑でした」といった生の声があれば、それがそのショップにおける「カーキ」の正解です。
📊 比較表
【通販サイトの表記から読み解く「カーキ」の正体判別表】
| チェック項目 | 「茶系カーキ」のサイン | 「緑系カーキ」のサイン |
|---|---|---|
| 併記される色 | ベージュ、テラコッタ、キャメル | オリーブ、モスグリーン、アーミー |
| 写真の影の色 | 黄色み、オレンジみを感じる | 青み、黒み、グレーみを感じる |
| レビューの傾向 | 「カフェオレ色」「濃いベージュ」 | 「軍服っぽい緑」「深い緑色」 |
| JIS規格との合致 | 合致する(本来のカーキ) | 合致しない(慣習的な呼称) |
あなたに似合うのはどっち?「茶系カーキ」と「緑系カーキ」の選び方
色の正体が分かったら、次は「自分に似合うカーキ」を選んで、オシャレを楽しみましょう。
パーソナルカラーの視点を取り入れると、肌を美しく見せるカーキが分かります。
- イエローベース(イエベ)の方:
本来の定義である「茶系カーキ」が非常に得意です。肌に馴染み、健康的で都会的な印象を与えます。ゴールドのアクセサリーとの相性も抜群です。 - ブルーベース(ブルベ)の方:
茶系は顔色がくすんで見えやすいため、日本で定着した「緑系カーキ(オリーブ)」の中でも、少し青みやグレーを感じる色を選ぶのが正解です。シルバーのアクセサリーを合わせると、洗練された印象になります。
このように、パーソナルカラーとカーキの種類を掛け合わせることで、「カーキを着ると老けて見える」という悩みを解消し、自信を持って着こなせるようになります。
「カーキ」を味方につけて、賢くオシャレを楽しもう
「カーキ」という言葉の裏には、19世紀の戦場から現代の日本のファッションシーンに至るまでの、長い歴史と文化のズレが隠れていました。
本来のカーキは「土の色(茶系)」。でも、日本では「軍服の色(緑系)」もカーキ。
この2つの正解があることを知った今のあなたは、もう通販サイトの不親切な表記に惑わされることはありません。
次に「カーキ」という文字を見た時は、ぜひ今回お伝えした3つのチェックポイントを思い出してください。
曖昧な色の正体を見抜く知識は、あなたの買い物をより楽しく、そして確実なものに変えてくれるはずです。
自信を持って、あなたを一番輝かせる「最高のカーキ」を見つけてくださいね。
[参考文献リスト]
- JIS Z 8102:2001 物体色の色名 – 日本産業標準調査会 (JISC)
- 色の名前:カーキ (Khaki) – 一般財団法人 日本色彩研究所
- ファッション用語辞典:カーキ – 繊研新聞社
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