「すいません」は失礼?ビジネスで恥をかかない「すみません」の使い分けと信頼回復の技術

[著者情報]

一ノ瀬 真琴(いちのせ まこと)
ビジネスコミュニケーション・コーチ / 元・外資系企業エグゼクティブ秘書
延べ1万人以上の若手社員にマナー研修を実施。著書『一瞬で信頼される大人の言葉選び』がベストセラー。「失敗は成長の最高のスパイス」をモットーに、若手の自信を育むメンターとして活動中。

取引先との電話中、つい口に出てしまった「あ、すいません!」。

その直後、相手が一瞬黙ったような気がして、背筋が凍るような思いをしていませんか?

「今の言葉、失礼だったかも」「常識がないと思われたかな」と、デスクに戻っても不安が消えないといような若手ビジネスパーソンは少なくありません。

結論からお伝えしましょう。

ビジネスの場で「すいません」を使うことは、確かにマナー違反と見なされるリスクがあります。

しかし、安心してください。

言葉のミスは、その後の「10秒の振る舞い」で、ミスをする前以上の信頼に変えることができるのです。

この記事では、なぜ「すいません」がNGなのかという本質的な理由から、万が一言ってしまった時の「格上げリカバリー術」、そして二度と失敗しないための習慣化メソッドまで、プロの視点で徹底解説します。

読み終える頃には、あなたは自信を持って受話器を握れるようになっているはずです。

なぜ「すいません」はビジネスで危険なのか?相手が抱く「違和感」の正体

私も新人時代、緊張のあまり「すいません」を連発し、当時の上司から「君の言葉には重みがないね」と冷ややかに指摘されたことがあります。

当時は「一文字違うだけなのに、なぜそんなに厳しいのか」と戸惑いました。

しかし、その「一文字」にこそ、プロとしての姿勢が凝縮されているのです。

言語学的に見ると、「すいません」は「すみません」の音が崩れた「音便(おんびん)」と呼ばれる口語(話し言葉)です。

本来の「すみません」は、自分の気持ちが「済まない(解決しない)」という動詞から来ていますが、「すいません」はその発音を簡略化した、いわば「手抜き」の形なのです。

この「手抜き」の感覚を、特に年配のビジネスパーソンや厳しい取引先は敏感に察知します。

NHK放送文化研究所の調査によれば、「すいません」を不適切だと感じる人は年齢層が上がるほど顕著になり、50代以上では半数以上がビジネスでの使用に否定的な見解を示しています。

「すいません」は「すみません」が言いやすく変化した「音便」の形です。日常の親しい間柄では許容されますが、改まった場やビジネスシーンでは、相手を軽んじている印象を与えかねないため、避けるべき表現とされています。

出典: 「すいません」と「すみません」 – NHK放送文化研究所, 2016年4月1日

あなたが感じた「相手の一瞬の沈黙」は、もしかすると「この若手は、公私の区別がついていないのかもしれない」という小さな不信感の表れだったのかもしれません。

もし「すいません」と言ってしまったら?10秒で信頼を取り戻す「格上げリカバリー術」

「すいません」と口走ってしまった後、最もやってはいけないのは「あ、すみません、じゃなくて……」と慌てて謝り直すことです。

これでは卑屈な印象を与え、余計に頼りなさを強調してしまいます。

プロのリカバリーは、「失言を謝罪で消す」のではなく、「後続の言葉の質で上書きする」という考え方をとります。

失言した直後の10秒以内に、あえて「すみません」よりも一段上の敬語である「恐れ入ります」や「失礼いたしました」を意図的に配置するのです。

これを私は「格上げリカバリー術」と呼んでいます。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: ミスをした直後こそ、背筋を伸ばし、最も丁寧な「クッション言葉」を重ねてください。

なぜなら、人間は最後に聞いた情報の印象を強く受ける(親近効果)ため、直後に洗練された言葉を使うことで「先ほどの『すいません』は、たまたま口が滑っただけで、本来はマナーを心得ている人だ」と評価を上書きできるからです。

 

「すみません」を卒業する。デキる大人が使い分ける3つの上位互換フレーズ

「すみません」は、謝罪、感謝、依頼のすべてに使える便利な言葉ですが、ビジネスにおいては「語彙力が乏しい」「思考停止している」と見なされる原因にもなります。

「すみません」と「恐れ入ります」は、どちらも丁寧な表現ですが、後者はより相手への敬意と謙虚さが伝わる「格上げ」の関係にあります。

シーンに応じて「すみません」を以下の3つのフレーズに置き換えるだけで、あなたの言葉の品格は劇的に向上します。

「すみません」からの脱却!シーン別・格上げ言い換え表】

シーン 従来の表現 格上げ表現(推奨) 相手に与える印象
謝罪 すみません 申し訳ございません 深い反省と誠実さ
感謝 すみません ありがとうございます 前向きな敬意と喜び
依頼・クッション すみません 恐れ入ります 洗練された配慮と品格
ミスをした時 すいません 失礼いたしました プロとしての規律

特に「感謝」の場面で「すみません」を使っていませんか?

「お忙しい中すみません」を「お忙しい中、貴重なお時間をいただきありがとうございます」と言い換えるだけで、コミュニケーションの温度感は一気にポジティブなものへと変わります。

無意識の口癖を21日で矯正する「脱・すいません」トレーニング

知識として理解しても、長年染み付いた「すいません」という口癖は、すぐには直りません。

心理学の世界では、新しい習慣が定着するまでに「21日間」かかると言われています。

明日から、以下のスモールステップでトレーニングを始めてみましょう。

  1. 第1週:モニタリング期間
    自分が1日に何回「すいません(すみません)」と言っているか、正の字でカウントしてみてください。まずは「無意識」を「意識化」することがスタートです。
  2. 第2週:1日1回の「格上げ」
    1日に1回だけで構いません。意識的に「恐れ入ります」または「ありがとうございます」を使ってみてください。メールの冒頭で使うのが最もハードルが低く、おすすめです。
  3. 第3週:アウトプットの定着
    電話や対面でも、意識的に「すみません」を封印してみましょう。もし「すいません」と言ってしまったら、心の中で「失礼いたしました」と唱え、次の言葉を丁寧に繋ぎます。

21日後、あなたは「すいません」という言葉に違和感を抱くようになっているはずです。

その違和感こそが、あなたがプロのステージに上がった証拠なのです。


まとめ

「すいません」という言葉は、ビジネスという戦場においては、あなたの信頼を削りかねない「諸刃の剣」です。

しかし、その失敗を自覚し、改善しようとする今の佐藤さんの姿勢こそが、将来の大きな信頼へと繋がります。

  • 「すいません」は口語。ビジネスでは「すみません」が最低限のマナー。
  • 言ってしまったら、直後の「格上げリカバリー」で印象を上書きする。
  • 「恐れ入ります」を武器にして、言葉の品格を高める。

言葉が変われば、相手の反応が変わり、何よりあなた自身の自信が変わります。

明日からの電話、まずは一度だけ「恐れ入ります」と口にすることから始めてみませんか?


[参考文献リスト]

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