「早急に」の読み方はどっち?目上に失礼にならない「大人の催促」言い換えマナー

[著者情報]

✍️ 執筆者プロフィール:一ノ瀬 真琴(いちの瀬 まこと)
ビジネスコミュニケーション・コンサルタント。元・外資系役員秘書として、延べ1万人以上のビジネスパーソンに「相手を動かす言葉選び」を指導。著書『一流の催促、二流の命令』は、若手から管理職まで幅広く支持されている。「マナーは自分を守り、仕事を加速させる武器である」が信条。

「この資料、早急に対応してください」

重要なクライアントへのメールを作成中、ふと手が止まることはありませんか?

「『早急に』って、目上の人に使っても失礼じゃないかな?」

「そもそも読み方は『さっきゅう』だっけ、『そっきゅう』だっけ……」

送信ボタンを前にして感じるその小さな迷いは、あなたが相手を大切に思い、プロとして誠実に仕事をしようとしている証拠です。

しかし、ビジネスの現場では、その「一言」の選び方次第で、あなたの評価が「教養のある信頼できる人」にも、「無作法で威圧的な人」にもなり得ます。

今回は、私が秘書時代に培った、相手の心を動かしつつ自分の品格も守る「大人の催促術」を具体的にお伝えします。

この記事を読み終える頃には、あなたは自信を持って送信ボタンを押せるようになっているはずです。

「さっきゅう」か「そっきゅう」か?ビジネスで恥をかかない正解

まず、多くの人が迷う「読み方」の正解からお伝えしましょう。

結論から言えば、本来の正しい読み方は「さっきゅう」です。

しかし、現代では「そっきゅう」という読み方も「慣用読み(広く使われるようになった読み方)」として定着しており、間違いではありません。

文化庁の調査やNHKの指針を紐解くと、言葉の変遷がより明確に見えてきます。

「早急」の読み方について、本来は「サッキュウ」であるが、現在は「ソッキュウ」と読む人が非常に多くなっている。NHKでは、ニュースなどでは本来の読みである「サッキュウ」を優先して放送している。

出典: 「さっきゅう」か「そっきゅう」か – NHK放送文化研究所, 2016年3月1日

ここで重要なのは、「さっきゅう(本来の読み)」と「そっきゅう(慣用読み)」は、ビジネスシーンにおいて使い分けるべき競合関係にあるということです。

文化庁の「国語に関する世論調査」では、7割以上の人が「そっきゅう」と読んでいます。

しかし、公的な場や、マナーに厳しい年配のビジネスパーソン、あるいは教養を重んじる層の間では、依然として「さっきゅう」が「正しい読み」として根強く支持されています。

つまり、あなたが「さっきゅう」と発音することで、相手に「この人は言葉の本来の意味や背景を理解している、教養のある人だ」というポジティブな印象を与えることができるのです。

迷ったときは、より安全で品格を感じさせる「さっきゅう」を選ぶことをお勧めします。

なぜ「早急に」は目上の人に失礼だと言われるのか?

読み方が解決したところで、次に考えたいのが「使い方」です。実は、読み方以上に注意が必要なのが、この言葉が持つ「威圧感」です。

「早急にご対応ください」

このフレーズ、実は目上の人やクライアントに使うには、少しリスクがあります。

なぜなら、「早急に」という副詞は、相手の動作を規定する「命令」のニュアンスを含みやすいからです。

私も秘書になりたての頃、急ぎの案件で「早急にお願いします」と取引先へメールを送り、上司から厳しく指導されたことがあります。

「一ノ瀬さん、その書き方だと相手の都合を無視して、こちらが上から指示を出しているように聞こえるよ」と。

相手には相手のスケジュールがあります。

そこに「早急に」という言葉を投げつけるのは、土足で相手の予定に踏み込むようなもの。

特に、「早急に」と「クッション言葉」をセットにしない使い方は、ビジネスにおける信頼関係を損なう原因になりかねません。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 目上の人には「早急に」を単体で使わず、必ず依頼の形(〜いただけますでしょうか)と言い換えましょう。

なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、「言葉の意味が合っていれば失礼ではない」と勘違いしてしまいがちだからです。しかし、催促の本質は「相手を動かすこと」。相手を不快にさせては、結果として対応が後回しにされるという、最も避けたい失敗を招いてしまいます。

【保存版】相手を動かす「催促フレーズ・マトリックス」

では、具体的にどのような言葉を選べば良いのでしょうか。

相手との関係性と、案件の緊急度に応じた「催促フレーズ・マトリックス」を作成しました。

今のあなたの状況に当てはまるものを選んでみてください。

相手との関係性×緊急度別:最適な催促フレーズ集】

相手との関係 緊急度:低(念のため) 緊急度:中(通常) 緊急度:高(火急)
社内・同僚 お手すきの際にご確認ください 早急に進めてもらえると助かります 至急、ご確認をお願いします
上司・目上 お時間のある時で構いませんので お忙しいところ恐縮ですが、早めにご教示いただけますか 火急の件につき、ご対応いただけますと幸いです
クライアント ご確認いただけますと幸いです 可能な限り早くご返信いただけますでしょうか ○日○時までにご教示いただけますと大変助かります

ここで注目していただきたいのは、「早急に」という曖昧な言葉を、具体的な「デッドライン(期限)」や「火急」という言葉に置き換える手法です。

特にクライアントに対しては、「早急に」という言葉よりも「○日○時まで」と期限を明示する方が、相手もスケジュールが立てやすく、結果として早く動いてもらえます。

また、本当に差し迫った状況では「火急(かきゅう)の件」という言葉を使うことで、プロフェッショナルな緊張感を伝えることができます。

FAQ:よくある疑問「至急」や「速やかに」との違いは?

最後に、よく受ける質問にお答えします。

Q. 「至急」と「早急」はどう使い分ければいいですか?

A. 「至急」は「早急」よりもさらに緊急度が高い言葉ですが、より命令的な響きが強くなります。 基本的には社内や部下に対して使う言葉であり、社外や目上の人には「火急の件」や「至急、お願いしたく存じます」と、非常に丁寧な表現とセットにする必要があります。

 

Q. 「速やかに」は使ってもいいですか?

A. 「速やかに」は法律用語などでよく使われる、少し硬い表現です。ビジネスメールでは「早急に」よりも事務的な印象を与えます。相手に動いてもらうための「お願い」としては、少し冷たく感じられることもあるため、前述のマトリックスにあるような「可能な限り早く」といった表現の方がスムーズです。

 

Q. メールの件名に「早急に」と入れてもいいですか?

A. 件名には「【至急】」や「【ご確認】」のように、一目で内容がわかる言葉を入れるのがマナーです。「早急に」は件名よりも本文中で、状況説明と共に使うのが適切です。


まとめ:言葉選びは、相手への敬意そのもの

「早急に」という言葉一つをとっても、読み方や使い方にこれだけの深みがあります。

本来の読みである「さっきゅう」を使い、相手の状況を慮るクッション言葉を添える。

その一手間が、あなたのプロフェッショナルとしての信頼を築いていきます。

マナーとは、決して相手を縛るための堅苦しいルールではありません。

あなた自身の誠実さを伝え、仕事を円滑に進めるための「武器」なのです。

まずは、次のメールで「さっきゅう」と心の中で唱えながら、相手の状況に合わせたフレーズを一つ選んでみてください。

あなたの丁寧な言葉選びは、必ず相手に伝わり、良い結果として返ってくるはずです。


[参考文献リスト]

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