「根拠とは?」上司を納得させる3つの要素|理由との違いと説得力を生む変換術

「君の話には根拠がないんだよね」。

会議の席で上司からそう告げられ、頭が真っ白になった経験はありませんか?

26歳当時の私は、まさにその言葉に打ちのめされていました。

自分なりに一生懸命考え、熱意を持って提案したはずなのに、なぜ全否定されてしまうのか。

悔しくて、情けなくて、デスクに戻ってからも仕事が手につかなかったことを今でも鮮明に覚えています。

 

しかし、多くのビジネスパーソンが直面するこの問題には、明確な解決策があります。

「根拠」とは、あなたの主観的な思い(理由)を支えるための「客観的な事実」のことです。

この記事では、上司から「根拠は?」と詰められてしまう原因を解明し、あなたの「感想」を「最強の武器」へと変える具体的な技術をお伝えします。

この記事を読み終える頃には、あなたは自信を持って「これが私の提案の根拠です」と言い切れるようになっているはずです。


[著者情報]

新田 健治(あらた けんじ)
ロジカルコミュニケーション・アドバイザー。元外資系コンサルティングファーム・マネージャー。
20代の頃は「論理性の欠如」を理由に毎日上司から厳しい指摘を受けていたが、独自の「ファクト・トランスフォーム術」を開発し克服。現在は延べ3,000人以上の若手社員に、現場で即効性のあるロジカルシンキングを指導している。著書に『「根拠は?」と言わせない伝え方の技術』がある。


なぜあなたの説明は「根拠がない」と言われるのか?理由と根拠の決定的な違い

「一生懸命考えているのに、なぜ認めてもらえないのか」と悩む佐藤さんのような若手社員が陥りやすい罠があります。

それは、「理由(Reason)」と「根拠(Basis)」を混同していることです。

ビジネスの現場において、理由と根拠は全く別物です。

  • 理由(Reason): 「なぜなら〜だと思うから」という、あなたの頭の中にある主観的な思い
  • 根拠(Basis): その理由を裏付ける、あなたの外の世界にある客観的な事実

例えば、あなたが「このレストランは美味しい(主張)」と言いたい時、「私が美味しいと思ったから(理由)」だけでは、他人は納得しません。

しかし、「食べログで星4.0を獲得し、100人が高評価している(根拠)」という事実を添えれば、説得力は一気に高まります。

上司が「根拠がない」と指摘する時、上司はあなたの熱意を否定しているのではなく、「組織として意思決定をするための、客観的な判断材料が足りない」と警告しているのです。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 「根拠」は自分を正当化するための道具ではなく、上司が「決裁するリスク」を下げるための安心材料だと捉え直してください。

なぜなら、上司の役割はあなたの意見の正しさを判定することではなく、その提案に乗って失敗しないかを確認することだからです。この視点の転換ができるだけで、集めるべき情報の質が劇的に変わります。


「感想」を「最強の武器」に変える!3分間ファクト・トランスフォーム術

あなたの主観的な「感想」を、上司が唸る「根拠」へと変換するには、「説得の三角形」というフレームワークを活用するのが最短ルートです。

説得の三角形とは、「主張(結論)」「理由(ロジック)」「事実(根拠)」の3つがセットになって初めて、相手は納得するという論理構造のことです。

説明に足りなかったのは、この三角形の土台となる「事実」の部分です。

具体的に、理由にプラスすべき「事実(根拠)」は以下の3つの要素に分類されます。

  1. 定量データ(数字): 市場シェア、売上推移、アンケート結果など。
  2. 一次情報(現場の声): 顧客から直接聞いた要望、競合店舗の視察結果など。
  3. 第三者の事例(社会的証明): 競合他社の成功事例、専門家の見解、公的機関の統計など。


明日から使える!説得力を高める「根拠」の集め方と言い換えフレーズ集

「根拠が必要なのはわかったけれど、手元にデータがない時はどうすればいいのか」という質問をよく受けます。

そんな時こそ、泥臭い「一次情報」の出番です。

ネットで拾った二次情報よりも、「昨日、A社の担当者がこう言っていました」という生の声の方が、ビジネス現場では強力な根拠になります。

以下の比較表を参考に、明日からの報告スタイルをアップデートしてみましょう。

📊 比較表
シーン別:感想(NG)と根拠(OK)の伝え方比較】

シーン 感想のみ(NG例) 根拠あり(OK例) 根拠のポイント
進捗報告 「作業は順調に進んでいると思います。」 「全10工程のうち7工程が完了しており、予定より2日早く進んでいます。」 定量データ(数字)
企画提案 「このデザインの方が、顧客に受ける気がします。」 「既存顧客5名にヒアリングしたところ、4名がこちらの案を支持しました。」 一次情報(現場の声)
トラブル報告 「大した問題ではないと判断しました。」 「過去の類似事例3件と照らし合わせましたが、いずれも当日中に復旧しています。」 第三者の事例

また、言葉遣い一つでも印象は変わります。

「〜だと思います」という主観表現を、「〜という事実に基づき、〜と判断しました」という客観表現に置き換える練習をしてみてください。

これだけで、上司が受ける「論理的イメージ」は劇的に向上します。


FAQ:エビデンスや証拠、裏付けとはどう使い分けるべき?

「根拠」と似た言葉が多くて混乱するという方のために、ビジネスシーンでの使い分けを整理しました。

  • エビデンス (Evidence): 主にITや医療業界で使われる「証拠」のこと。システムが正常に動いたログや、実験データなどを指します。
  • 証拠 (Proof): 裁判や警察の捜査などで使われる、ある事実を確定させるための材料。ビジネスでは「言った言わない」を防ぐメールの履歴などがこれに当たります。
  • 裏付け (Corroboration): 提示した根拠が本当に正しいかを、別の角度から補強すること。「Aさんの証言の裏付けを取るために、防犯カメラを確認する」といった使い方をします。

基本的には、「根拠」という言葉を使い、その中身として「データ」や「事実」を提示すると覚えておけば間違いありません。


まとめ

「根拠とは何か」という問いに対する答えは、非常にシンプルです。

それは、あなたの「理由(思い)」を、誰もが否定できない「事実」で支えることです。

  1. 理由は主観、根拠は客観であることを忘れない。
  2. 数字、一次情報、事例の3つを根拠の材料にする。
  3. 「説得の三角形」を意識して、主張・理由・事実をセットで伝える。

かつての私のように、上司の「根拠は?」という言葉に怯える必要はありません。

その問いは、あなたの提案をより強固なものにするための「ヒント」なのです。

まずは明日の報告で、「1つだけ数字を添える」、あるいは「顧客の声を1つ引用する」ことから始めてみてください。

その小さな一歩が、あなたのビジネスパーソンとしての信頼を大きく変えるはずです。


[参考文献リスト]

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