SNSでマーモットの動画を見て、「こんなにかわいい動物なら、ペットとして飼ってみたい」と思ったことはありませんか。
ところが、いざ「マーモット ペット」と検索すると、値段、冬眠、温度管理、輸入、動物病院……と、モルモットなどの一般的な小動物とは違う話が次々に出てきます。
先に結論を言うと、マーモットを日本で飼育することを検討すること自体は可能ですが、「法律上飼える=誰でも簡単に飼える」という意味ではありません。
判断するときは、
- 法律・輸入上の条件を満たせるか
- そもそも国内で適切に入手できるか
- その種類に合った環境・食事・温度管理・医療を用意できるか
の3段階に分けて考える必要があります。
マーモットは「マーモット」という1種類の動物ではなく、複数の種を含むグループです。
さらに冬眠という非常に特殊な生理機能を持つため、かわいさだけで飼育を決めると、迎えた後に「思っていたペットと違った」となりかねません。
この記事では、マーモットを飼う前に知っておきたい値段、法律、飼育環境、食事、動物病院、冬眠までを、初心者にも分かるように整理します。
マーモットは日本で飼える?まず「法律・入手・飼育」を分けて考えよう
結論から言えば、マーモットについて調べるときは、「飼える?」という一つの質問を三つに分解することが重要です。
「法律上OK」と「実際に飼える」は別問題
たとえば、ある動物について「特定動物ではないから飼える」と分かったとしても、それだけで自宅に迎えられるとは限りません。
実際には、
| 判断項目 | 確認すること |
|---|---|
| 法律 | 特定動物、外来生物、自治体の条例などに該当しないか |
| 輸入 | 海外から入れる場合に必要な届出・衛生証明などがあるか |
| 入手 | 正規の販売・譲渡ルートが存在するか |
| 飼育 | 種類に適した温度、空間、食事を維持できるか |
| 医療 | 診察できる獣医師を事前に確保できるか |
| 生活 | 騒音、におい、脱走、近隣環境などに対応できるか |
まで確認する必要があります。
特に注意したいのが、動物検疫と動物の輸入届出制度は同じものではないという点です。
農林水産省の動物検疫所によれば、ネズミ、ハムスター、リスなどの齧歯目は現在、動物検疫の対象動物ではありません。
一方、厚生労働省の「動物の輸入届出制度」は、家畜など一部の例外を除く陸生哺乳類を対象としており、海外から動物を持ち込む際には別途確認が必要です。
つまり、
「動物検疫の対象外」=「何の手続きもなく海外から持ち込める」ではありません。
海外から購入・輸入する場合は、購入先だけでなく、厚生労働省や関係機関に必要な手続きを確認することが大切です。
特定動物についても「マーモット」という名前だけで判断しない
環境省の特定動物制度では、人に危害を加えるおそれのある動物が対象となり、特定動物については愛玩目的での飼育が禁止されています。
ただし、特定動物に該当するかどうかは、「マーモット」という一般名だけで判断せず、実際に迎える動物の種名・学名で確認するのが安全です。
また、外来生物法など別の規制が関係する可能性もあります。
したがって、販売者から「飼育できます」と説明された場合でも、それだけで判断せず、種名を確認して公的機関へ照会することをおすすめします。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: マーモットを迎える前に、まず「正式な種名」と「輸入・販売経路」を確認してください。
なぜなら、マーモットは複数の種を含むため、法律や飼育条件を一括りにできないからです。「マーモットだから大丈夫」という考え方ではなく、個体の種まで確認することが、トラブルを避ける最初の一歩になります。
マーモット飼育で本当に難しいのは「かわいさ」の裏側
マーモットの飼育で最も重要なのは、「大型のモルモット」くらいの感覚で考えないことです。
マーモットとモルモットは名前が似ていますが、生物学的には別の動物です。
さらに、マーモットは種によって生息環境や生活リズムが異なります。
マーモットは「1種類のペット」ではない
マーモット属には、アルプスマーモット、ボバクマーモット、ウッドチャック、ヒマラヤマーモットなど複数の種類があります。
国内で流通・飼育例が語られている種類にも違いがあるため、「マーモットの飼い方」を一つのルールだけで説明するのは危険です。
ここが、一般的なペット情報とマーモット情報を読むときの大きなポイントです。
「何度なら大丈夫?」ではなく、「どの種のマーモットについて話している?」から確認する。
この順番で考えてください。
冬眠は「寝るだけ」ではない
マーモットを語るうえで避けて通れないのが冬眠です。
研究では、アルプスマーモットの冬眠中に代謝率が大幅に低下し、体温も大きく変化することが確認されています。
冬眠は単なる長時間の睡眠ではなく、体温調節やエネルギー代謝が大きく変化する生理現象です。
また、別の研究では、マーモットが冬眠に入る前に体脂肪を蓄え、それを冬季のエネルギー源として利用することが示されています。
つまり、
冬眠する動物だから、冬に寒くして寝かせればいい
という単純な話ではありません。
冬眠の有無、時期、温度、栄養状態などは種類や個体、飼育条件によって慎重に考える必要があります。
温度管理も「○℃なら絶対安全」と考えない
マーモットについて検索すると、「15~25℃」「20~25℃」など具体的な温度が紹介されている記事があります。
ただし、こうした数字をすべてのマーモットに共通する絶対的な基準として扱うのは避けるべきです。
マーモットは種類によって生態が異なり、野生では季節変化と冬眠を前提とした生活をしています。
したがって、飼育環境では、
種類 → 生態 → 活動期・冬眠期 → 温度管理
という順番で考える必要があります。
特に日本の夏は、冷涼な地域に適応した動物を飼ううえで大きな課題になり得ます。
マーモットの食事も「野菜だけ」では考えない
マーモットは草食性の動物として扱われることが多いものの、具体的な食事内容は種や飼育条件によって検討する必要があります。
獣医学資料では、マーモットを含む一部の齧歯類について、牧草や適切なペレット、量を制限した野菜などを組み合わせた食事が紹介されています。
重要なのは、SNSで見かけた「マーモットが食べているもの」を、そのまま毎日の食事にしないことです。
食べることと、長期的に健康を維持できる食事は同じではありません。
迎える個体の種名が分かったら、エキゾチックアニマルを診療できる獣医師に食餌内容を確認するのが安心です。

値段だけで決めない。迎える前に確認したい8つの条件
「マーモットはいくら?」という検索は多いですが、購入価格だけを見ると判断を誤ります。
公開されている国内の販売情報は非常に限られています。
たとえばDr. Marmotは、2024年までに販売されたマーモットについて、インターネットや聞き取りで約17件を調査し、平均価格を110.4万円、問い合わせた輸入会社の価格を110~130万円と紹介しています。
これは公的な市場統計ではなく、特定の調査による参考値です。
また、2025年2月には同サイトがヒマラヤマーモットの国内初輸入について報告しています。
種類や輸入条件によって価格は変わるため、「マーモットは○万円」と一つの数字で考えないほうがよいでしょう。
迎える前の8項目チェックリスト
| チェック項目 | 確認すること | 注意したいポイント |
|---|---|---|
| ① 種類 | 正式な種名・学名 | 「マーモット」だけでは不十分 |
| ② 法律 | 特定動物・外来生物など | 販売者の説明だけで決めない |
| ③ 輸入 | 届出・衛生証明など | 海外購入なら特に要確認 |
| ④ 入手先 | 販売者・繁殖・輸入経路 | 個体情報や書類を確認 |
| ⑤ 飼育環境 | 空間・温度・日照・脱走対策 | 一般的な小動物用ケージだけで考えない |
| ⑥ 食事 | 牧草・ペレットなど | 種に合わせて獣医師へ相談 |
| ⑦ 医療 | 診療できる獣医師 | 迎えてから探すのでは遅い |
| ⑧ 継続費用 | 冷暖房・食費・医療費など | 購入価格だけで予算を組まない |
① まず「何マーモットなのか」を確認する
これは最優先です。
「マーモット」という名称だけで話を進めるのではなく、種名、出生地、繁殖・輸入履歴、年齢、性別、健康状態などを確認しましょう。
販売ページに情報が少ない場合は、購入を急がず質問してください。
② 購入価格より「年間維持」を考える
仮に100万円を超える個体を購入するとしても、費用は購入時だけではありません。
冷暖房、飼育設備、食事、消耗品、健康診断、治療費などが継続的に発生します。
特にマーモットでは温度管理が重要なテーマになるため、エアコンなどの空調を長期間稼働させる前提で生活費を試算する必要があります。
③ 動物病院は「迎える前」に探す
これはかなり重要です。
「具合が悪くなったら病院を探せばいい」と考えるのではなく、購入前に診療可能な動物病院へ相談することをおすすめします。
「小動物を診ています」という病院でも、マーモットを診療できるとは限りません。
問い合わせるときは、
- マーモットの診療経験があるか
- 初診を受けられるか
- 夜間・緊急時の対応はどうか
- 血液検査や画像検査が必要になった場合に対応できるか
まで確認しておくと安心です。
④ 「広いケージがあれば十分」と考えない
マーモットは体格が大きく、穴を掘るなどの自然行動も持つ動物です。
そのため、飼育環境を考えるときは「ケージのサイズ」だけではなく、
移動できるか、掘れるか、隠れられるか、脱走を防げるか
まで考える必要があります。
住居がマンションなら、床材や壁へのダメージ、騒音、脱走、共用部分への移動なども事前に想定しておきましょう。
⑤ 夏の温度管理を想像する
マーモットを迎える前に、ぜひ一度、
「真夏に停電したらどうする?」
まで考えてみてください。
空調設備が止まったときのバックアップ、外出中の室温確認、停電時の対応などを決めておくと、飼育の現実がかなり見えてきます。
「エアコンをつければ大丈夫」ではなく、エアコンが止まった場合まで含めて飼育環境です。
⑥ SNSの「食べている姿」を飼育マニュアルにしない
マーモットが果物や野菜を食べている動画は、とてもかわいらしいものです。
しかし、
「食べている」=「毎日与えるべき」
ではありません。
食事は、種類、年齢、活動量、健康状態などを踏まえて考える必要があります。
⑦ 「なつく」と「人間の思い通りになる」は違う
マーモットは個体差が大きく、飼育環境や人との接し方によって人への反応も変わります。
信頼関係を築ける個体もいますが、犬や猫と同じ意味での「なつく」を期待すると、ギャップが生まれる可能性があります。
マーモットとの暮らしでは、
触れ合うことより、安心して過ごせる環境を作ること
を優先したほうがよいでしょう。
⑧ 最後に「10年後」を想像する
マーモットを迎えるなら、「今かわいい」だけでなく長期的な生活設計が必要です。
引っ越し、転職、結婚、出産、海外赴任、介護など、生活環境が変わる可能性もあります。
マーモットを迎える決断は、ペット用品を買う感覚ではなく、長期間にわたって特殊な飼育環境を維持する決断として考えてください。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: マーモットの購入を決める前に、「販売価格+毎月の飼育費+医療費+緊急時の費用」まで紙に書き出してください。
なぜなら、購入時の価格だけなら払えても、空調や医療を含めた継続費用で負担が大きくなるケースがあるからです。価格を調べることは、安い個体を探すためではなく、最後まで責任を持てるか確認するために行います。
マーモットはなつく?冬眠させる?よくある質問
Q1. マーモットはなつきますか?
個体差があるため、「必ず人になつく」とは考えないほうがよいでしょう。
人間との生活に慣れ、飼い主との接触を受け入れる個体は考えられますが、犬や猫と同じコミュニケーションを期待するのは禁物です。
まずは触ることより、安心して食事や睡眠ができる環境を作ることを優先しましょう。
Q2. モルモットと同じ飼い方で大丈夫ですか?
同じではありません。
名前は似ていますが、マーモットとモルモットは別の動物です。
マーモットには冬眠という大きな生理的特徴があり、体格や行動も異なります。
「モルモットを飼った経験があるから大丈夫」と考えず、マーモットの種類に合わせて飼育環境を設計してください。
Q3. 冬眠させたほうがいいですか?
自己判断で冬眠させたり、逆に冬眠を妨げたりするのは避けてください。
冬眠はマーモットにとって重要な生理現象ですが、飼育下でどのように管理するべきかは種類や個体、飼育環境によって検討が必要です。
特に冬眠前の栄養状態や体重、温度管理などが関係するため、経験のある獣医師に相談してから判断しましょう。
Q4. マンションでも飼えますか?
「マンションだから不可能」と一律には言えませんが、住環境との相性を慎重に確認する必要があります。
飼育スペースだけでなく、騒音、床や壁へのダメージ、脱走、空調、停電時の対応、管理規約などを確認してください。
また、管理規約で飼育できる動物の種類やサイズが定められている場合があります。
Q5. マーモットはいくらで買えますか?
公開情報では100万円前後から100万円台の例がありますが、固定価格として考えないでください。
Dr. Marmotは、2024年までの約17件の調査から平均110.4万円、輸入会社への問い合わせ例として110~130万円を紹介しています。
ただし、これは公的な価格統計ではありません。種類、年齢、輸入条件、流通状況などで変わります。
さらに、購入価格とは別に飼育設備、空調、食費、医療費などが必要です。
Q6. どこで買えますか?
一般的なペットショップでいつでも購入できる動物とは考えないほうがよいでしょう。
国内流通は限られており、販売情報も多くありません。
購入を検討する場合は、販売者の実績だけでなく、個体の出自、正式な種名、輸入・繁殖に関する書類、健康状態、飼育後のサポート体制まで確認してください。
まとめ|「飼える?」ではなく「責任を持って飼える?」で考えよう
マーモットをペットとして迎えたいなら、最初に考えるべきなのは「どこで買えるか」ではありません。
確認する順番は、
① 種類を特定する
↓
② 法律・輸入条件を確認する
↓
③ 正規の入手経路を確認する
↓
④ 飼育環境を準備する
↓
⑤ 診療できる獣医師を確保する
↓
⑥ 継続費用と緊急時の対応を考える
↓
⑦ それでも責任を持って暮らせるか判断する
です。
マーモットは、見た目のかわいさだけでなく、冬眠、温度管理、食事、広い飼育環境、医療などを含めて考える必要がある動物です。
だからこそ、
「マーモットは飼える?」から「自分はこのマーモットを最後まで責任を持って飼える?」へ質問を変える。
この視点が大切です。
「飼わない」という結論になったとしても、それは失敗ではありません。
必要な環境を用意できないと分かった段階で立ち止まることも、動物を守るための責任ある判断です。
反対に、必要な環境、費用、医療、法的条件を一つずつ確認し、それでも迎えたいと思えたなら、次は販売者や獣医師に具体的な飼育条件を相談してください。
かわいいから始まった興味を、最後まで責任を持てる選択につなげる。
それが、マーモットとの暮らしを考える最初の一歩です。
参考文献・出典
- 厚生労働省「動物の輸入届出制度」
- 農林水産省 動物検疫所「その他の動物の持ち込み及び持ち出しについて」
- 環境省「特定動物(危険な動物)の飼養又は保管の許可について」
- MSD Veterinary Manual「Nutrition in Rodents and Lagomorphs」
- Ortmann & Heldmaier, “Regulation of body temperature and energy requirements of hibernating alpine marmots”
- Ruf et al., “Energy expenditure and body composition in a hibernator, the alpine marmot”
- Dr. Marmot「マーモットはペットにできるの?日本で会えるの?」
- Dr. Marmot「マーモットを飼いたい!ペットの可否や生態、飼育方法、お値段などご紹介」
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