「大事をとって」の意味と使い方|「念のため」との違いを例文で解説

「少し体調が悪いので、今日は休もうかな……」

そう思って上司への連絡文を書いていると、ふと手が止まることがあります。

「大事をとって休みます」と書いていいのかな?

「念のため休みます」のほうが自然なのかな?

そもそも「大事をとって」って、敬語なの?

結論からいうと、「大事をとって」は、無理をせず、用心して安全側に判断するときに使う表現です。

「大事を取る」は、辞書で「軽々しく物事をしない。用心し、自重する」と説明されています。

実際に「大事を取って仕事を休む」という用例も掲載されています。

また、国立国語研究所の「基本動詞ハンドブック」では、「大事をとる」を「無理をしないで、念のため、万が一に備えて慎重に行動する」と説明し、「大事をとって休暇を取らせていただきます」という実例も紹介しています。

この記事では、

  • 「大事をとって」の正確な意味
  • 「念のため」との違い
  • 上司や目上の人に使えるのか
  • 「大事をとって休みます」は自然なのか
  • そのまま使える例文
  • 「大事をとって」の言い換え

まで、まとめて解説します。

「大事をとって」の意味とは?

「大事をとって」は、無理をせず、用心して慎重に行動するという意味です。

「大事を取る」の辞書的な意味は、「軽々しく行動せず、用心して事にあたる。自重する」です。

もっと簡単な言葉にすると、

「何か起きてからでは遅いので、あらかじめ安全なほうを選ぶ」

という感覚です。

たとえば、少し熱があるとします。

「熱はそれほど高くないから、出勤しても大丈夫かもしれない」

という状況でも、

「悪化したら困るから、今日は休もう」

と判断する。

この「無理をせず、安全なほうを選ぶ」という判断が、まさに「大事をとる」です。

「大事を取る」と「大事をとって」の違い

基本となる表現は「大事を取る」です。

そこから、

大事を取る
↓
大事をとって休む
↓
「慎重に判断して、休む」という意味になる

と考えると分かりやすいでしょう。

「大事をとって」は、「大事を取る」という判断を、その後に続く具体的な行動につなげる表現です。

たとえば、

  • 大事をとって休む
  • 大事をとって欠席する
  • 大事をとって参加を見送る
  • 大事をとって延期する

などと使えます。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 「大事をとって」を覚えるときは、「念のため」という一語だけで暗記しないことをおすすめします。

なぜなら、実際の文章では「念のため」と迷う場面が非常に多いからです。「安全側に行動を変える」という感覚まで押さえておくと、初めて見る文章でも判断しやすくなります。

 

「大事をとって」と「念のため」の違い

「大事をとって」と「念のため」は意味が近いものの、使う場面には違いがあります。

迷ったときは、まず次の1秒判定を覚えておくと便利です。

迷ったら、この1秒判定

行動そのものを安全側に変える →「大事をとって」

確認・準備を追加する →「念のため」

もちろん、実際の日本語では両者が重なる場面もあります。

ただ、この判断軸を持っておくと、使い分けで迷いにくくなります。

「大事をとって」は行動を安全側に変える

たとえば、風邪気味で出勤するか迷っているとします。

「大事をとって、今日は休みます。」

これは、

「出勤する」という選択肢もあるけれど、体調を考えて出勤しないという安全側の判断をした

という意味です。

国立国語研究所にも、発熱があるため「大事をとって休暇を取らせていただきます」という用例があります。

「念のため」は確認・準備を追加する

一方、「念のため」は、すでに取ろうとしている行動を大きく変えるというより、確認や準備を追加する場面で使いやすい表現です。

たとえば、

「念のため、添付ファイルをもう一度確認します。」

これは「ファイルを送らない」という判断ではありません。

予定どおりメールを送るために、確認を1回追加しているわけです。

📊 比較表
【「大事をとって」と「念のため」の使い分け】

比較ポイント 大事をとって 念のため
基本イメージ 用心して安全側に判断する 確認・準備を追加する
判断の方向 行動を変える・控える 追加で確認する・備える
典型例 休む、欠席する、延期する 再確認する、資料を準備する
例文 大事をとって休みます 念のため確認します
近い表現 無理をせず、慎重に 万が一に備えて、確認のため

つまり、

「やらない・控える・変更する」方向なら「大事をとって」

「もう一度確認する・追加で備える」方向なら「念のため」

と考えると分かりやすくなります。

 

「大事をとって」の使い方・例文

「大事をとって」は、体調不良で休む場面だけでなく、欠席・参加見送り・延期など、慎重な判断をするときにも使えます。

ここでは、実際に使いやすい例文を場面別に見ていきましょう。

体調不良で休む

もっともイメージしやすいのが、体調不良の場面です。

少し熱があるため、大事をとって本日は休みます。

職場の上司など、丁寧に伝えたい相手なら、

体調が優れないため、大事をとって本日は休ませていただきます。

とすると自然です。

国立国語研究所にも「大事をとって休暇を取らせていただきます」という実例が掲載されています。

欠席する

体調や状況を考えてイベントなどへの参加を見送る場合にも使えます。

体調を考慮し、大事をとって今回は欠席いたします。

もう少し柔らかくするなら、

大事をとって、今回は参加を見送ります。

という表現も考えられます。

参加を見送る

必ずしも「休む」と組み合わせる必要はありません。

大事をとって、今回の参加は見送らせていただきます。

ここでは「参加する」という行動を安全側に変更しています。

予定を延期する

状況によっては、予定を変更する場面でも使えます。

大事をとって、日程を変更させていただければと思います。

ただし、ビジネスメールでは「大事をとって」だけで理由を十分に説明できるとは限りません。

相手に必要な情報があるなら、

「体調を考慮し、大事をとって日程を変更させていただければと思います。」

のように、理由を補うと伝わりやすくなります。

体調不良以外にも使える

「大事をとって」は体調不良専用の表現ではありません。

辞書にも「大事を取って欠席する」という用例があり、国立国語研究所の説明でも「無理をしない」「万が一に備えて慎重に行動する」という広い意味が示されています。

大切なのは、

何らかのリスクを考えて、慎重な行動を選んでいる

ということです。

「大事をとって」と「念のため」を間違えやすい例

ここは特に注意したいポイントです。

たとえば、

△ 大事をとって、メールの添付ファイルをもう一度確認します。

と書いても意味が完全に通じないわけではありません。

ただ、この場面で言いたいのが「確認を追加しておこう」ということなら、

○ 念のため、メールの添付ファイルをもう一度確認します。

のほうが意図を直接表現できます。

逆に、

大事をとって、今日は出社を控えます。

なら、「出社」という行動そのものを控える判断なので、「大事をとって」がよく合います。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 「大事をとって」を使う前に、「私は何を慎重にしているのか?」を考えてみてください。

なぜなら、言葉だけを見て使うと「念のため」と混同しやすいからです。「休む」「欠席する」「延期する」など、予定していた行動を安全側に変える場面なら、「大事をとって」という意味が見えやすくなります。

「大事をとって」は敬語?上司に使える?

「大事をとって」自体が敬語というわけではありません。ただし、上司や目上の人に使うことはできます。

ここは、

「敬語かどうか」

と

「目上の人に対して失礼かどうか」

を分けて考えると分かりやすくなります。

「大事をとって」自体は敬語表現ではない

「大事をとって」は、慎重に行動するという意味を表す表現です。

そのため、「大事をとって」という言葉自体に尊敬語や謙譲語としての働きがあるわけではありません。

では、なぜ上司にも使えるのでしょうか。

それは、相手に対する丁寧さは「大事をとって」だけで決まるものではないからです。

文化庁は「敬意表現」について、相手や場面に配慮しながら、敬語だけでなくさまざまな表現を使い分けるものと説明しています。

つまり、

「大事をとって」=判断内容
「休ませていただきます」=相手に合わせた丁寧な言い方

と分けて考えると理解しやすいでしょう。

上司にはどう言えば自然?

たとえば、次のように調整できます。

カジュアルな言い方 丁寧な言い方
大事をとって休みます。 大事をとって休ませていただきます。
大事をとって休みます。 大事をとって本日は休暇をいただきます。
大事をとって参加をやめます。 大事をとって参加を見送らせていただきます。

「大事をとって」という部分を無理に難しい敬語へ置き換える必要はありません。

後ろに続く表現を、相手との関係に合わせて丁寧に整えるのがポイントです。

文化庁の資料でも、敬意表現では相手との関係や場面を考慮することが重視されています。

上司への連絡なら、こんな形が使いやすい

体調が優れないため、大事をとって本日は休ませていただきます。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

このようにすると、「大事をとって」という判断と、上司に対する丁寧な伝え方を両立できます。

「大事をとって」の言い換え

「大事をとって」と似た表現はいくつかあります。

ただし、すべてを完全な同義語として置き換えられるわけではありません。

表現 主なニュアンス 向いている場面
大事をとって 安全側に慎重な判断をする 休む・欠席する・延期する
念のため 確認・準備を追加する 再確認・確認漏れ防止
無理をせず 負担を避ける 体調・負荷を考慮する
慎重を期して 十分に慎重な対応をする 改まった場面・ビジネス
万が一に備えて 起こる可能性のある事態に備える リスクへの事前準備

たとえば、

大事をとって休みます。

なら、「休む」という安全側の判断が中心です。

一方、

念のため確認します。

なら、「確認」という追加行動が中心です。

また、

万が一に備えて、予備の資料を用意します。

なら、将来起こるかもしれない事態への準備が中心になります。

このように、言い換えるときは「意味が似ているか」だけではなく、何を伝えたいのかを見ることが大切です。

「大事をとって」に関するFAQ

Q.「大事をとって」は漢字でどう書きますか?

「大事を取って」と漢字で書けます。

一方、文章中では「大事をとって」とひらがな交じりで表記することもできます。

辞書では「大事を取る」という形で掲載されています。

Q.「大事をとって」は上司に使えますか?

使えます。

ただし、「大事をとって」そのものを敬語として考えるのではなく、文全体を相手に合わせて丁寧に整えるのがポイントです。

たとえば、

大事をとって休ませていただきます。

のようにすると、上司への連絡にも使いやすくなります。

Q.「大事をとって」と「念のため」は同じ意味ですか?

近い意味を持つ場面はありますが、完全に同じではありません。

「大事をとって」は、無理をせず安全側に行動するニュアンスが中心です。

「念のため」は、確認や準備を追加して万が一に備えるニュアンスで使われやすい表現です。

Q.「大事をとって」は体調不良以外にも使えますか?

使えます。

「大事を取る」は、軽々しく行動せず、用心して事にあたるという意味なので、体調不良だけに限定されません。

たとえば、

「大事をとって今回は欠席します」

「大事をとって日程を変更します」

のような使い方ができます。

Q.「大事をとって休みます」は自然ですか?

自然な表現です。

ただし、職場の上司などに伝える場合は、

「大事をとって本日は休ませていただきます」

のように、文全体を丁寧にするとより使いやすくなります。

まとめ:「大事をとって」は安全側に判断するときの表現

「大事をとって」の意味を一言でまとめるなら、

無理をせず、用心して、安全側に判断する

です。

「大事を取る」は、辞書で「軽々しく物事をしない。用心し、自重する」と説明されています。

国立国語研究所でも、「無理をしないで、念のため、万が一に備えて慎重に行動する」という意味で説明されています。

そして、使い分けで迷ったら次の2つを思い出してください。

行動そのものを安全側に変える →「大事をとって」

確認・準備を追加する →「念のため」

たとえば、

「体調が少し悪いので、休む」

なら、

大事をとって休みます。

「送信前に資料をもう一度確認する」

なら、

念のため確認します。

という具合です。

最後に、「大事をとって」と書こうとしている文章があるなら、送信する前に一度だけ、

「私は今、行動そのものを安全側に変えようとしている?」

と考えてみてください。

答えが「はい」なら、「大事をとって」を使う理由がはっきりします。

言葉の意味を丸暗記するより、その言葉でどんな判断を表しているのかを理解しておくほうが、初めて出会う場面でも迷いにくくなります。

参考文献・出典

  • コトバンク「大事を取る」
  • 国立国語研究所「基本動詞ハンドブック|取る・採る・執る」
  • 文化庁「敬語の指針」・敬意表現に関する資料

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