夏の草むらを歩いていると、突然「ギーッチョン、ギーッチョン」と大きな声が聞こえてくることがあります。
声のする方向を見ても、なかなか姿が見つからない。
「これって本当にキリギリス?」
「バッタとは違うの?」
「見つけたら何を食べさせればいい?」
――そんな疑問を持って検索した方も多いのではないでしょうか。
キリギリスは、見た目だけでなく鳴き声・生息場所・活動する時間帯を合わせて見ると、ぐっと正体をつかみやすくなります。
この記事では、キリギリスの基本的な特徴から、鳴き声、種類、オスとメスの違い、食べ物、飼育、産卵までを、実際に観察するときの視点でまとめます。
キリギリスはどんな虫?まず特徴を3分で理解
結論からいうと、キリギリスはバッタ目・キリギリス科に属する、長い触角と発達した後ろ脚を持つ昆虫です。
名前から「バッタの仲間かな?」と思うかもしれません。
分類上はたしかにバッタ目に含まれますが、いわゆるバッタ科の昆虫とは別のグループです。
キリギリスを見つけたら、まず次の特徴を確認してみましょう。
- 触角が非常に長い
- 後ろ脚が発達している
- 草むらで生活する
- 緑色や褐色などの個体がいる
- オスが特徴的な大きな声で鳴く
- 植物だけでなく、昆虫なども食べる
キリギリス科の昆虫は長い触角や発達した後肢を持ち、オスには鳴き声を出すための発音器があります。
「キリギリス」は1種類だけ?
ここは少し注意が必要です。
現在、環境省の市民参加型調査では、キリギリス科の対象としてニシキリギリスとヒガシキリギリスの2種が扱われています。
さらに、資料によって学名の扱いが異なる場合もあります。
そのため、初心者向けの記事では「キリギリス」という一般名から話を始めつつ、種類を詳しく知りたい段階でヒガシキリギリス・ニシキリギリスなどへ分けて考えるのが分かりやすいでしょう。
✍️ 専門資料からの一言アドバイス
【結論】: 最初から学名を覚える必要はありません。まず「声・場所・姿」の3つをセットで観察しましょう。
キリギリス類はよく似た種類があり、分類上の扱いにも注意が必要です。最初から名前を断定するより、「どんな場所で、どんな声がして、どんな姿だったか」を記録しておくほうが、あとから正確に調べやすくなります。
「この虫、キリギリス?」見分けるポイント
「ギーッチョン」という声を聞いたからといって、鳴き声だけで種類を断定するのはおすすめしません。
キリギリスを観察するときは、
①鳴き声 → ②生息場所 → ③体の特徴
の順に確認すると整理しやすくなります。
① まず鳴き声を聞く
環境省の市民参加型調査では、キリギリス科の一部について、写真がなくても鳴き声だけで報告できる対象として扱われています。
調査資料には、ニシキリギリス・ヒガシキリギリスの鳴き声として「ギィー チョン」が示されています。
つまり、キリギリスを探すときは「姿を探す」より先に、声の発生源を探すという方法が役立ちます。
② 次に「どこで鳴いているか」を見る
キリギリス類は、日当たりのよい草原などで見られます。
直翅類.jpでは、キリギリスについて7月上旬から10月上旬ごろに成虫が見られ、日当たりのよい草原で日中に鳴くと説明されています。
環境省の生態資料でも、キリギリス類は高茎草地、つまり比較的丈の高い草地と結びつきの強い昆虫として扱われています。
③ 最後に体を見る
見つけられたら、
- 長い触角
- 発達した後ろ脚
- 体色
- 翅の長さ
- 翅の斑紋
- メスなら産卵管
などを確認します。
ただし、草むらの中で鳴いているキリギリスは、意外なほど見つけにくい虫です。
直翅類.jpでも、人の気配を感じると草の根元へ逃げるため、「鳴き声はするのに姿が見えない」ことが特徴として紹介されています。

キリギリスの鳴き声はなぜ?オスだけが鳴く理由
キリギリスの特徴といえば、やはりあの大きな鳴き声です。
そして、野外で特徴的な声を出しているのはオスです。
キリギリスのオスは、前翅にある発音器を使って音を出します。環境省の調査資料でも「鳴くのはオスだけ」と明記されています。
なぜオスは鳴くの?
昆虫の鳴き声には、種類によってさまざまな役割があります。
キリギリスでは、オスが鳴くことは繁殖行動と深く関係しています。
つまり、
オス → 鳴き声を出す → メスへ存在を知らせる
という関係です。
ここで大切なのは、「鳴き声=単なる夏の風物詩」ではないこと。
人間には季節の音に聞こえる「ギーッチョン」も、キリギリスにとっては繁殖につながる重要なコミュニケーションなのです。
集団で鳴くときにも面白い特徴がある
直翅類.jpによると、キリギリスは複数の個体が鳴くとき、互いの音が重ならないように順番に鳴く習性があるとされています。
草むらから聞こえる声が、まるで「ギーッチョン……ギーッチョン……」と掛け合っているように感じられることがあるのは、こうした行動とも関係しています。

キリギリスは何を食べる?「草食だと思ったら違った」
キリギリスは、見た目からすると「草を食べる昆虫」に思えます。
ところが、実際には植物質だけでなく、昆虫などの動物質も利用する雑食性です。
環境省の資料でも、キリギリス類は高次消費者として位置づけられ、植物質と動物質の両方を利用する生態が示されています。
直翅類.jpでも、若齢幼虫では肉食傾向が弱い一方、中齢になると他の昆虫を捕らえて食べるようになると紹介されています。
キリギリスの食性
| 食べるもの | 役割 |
|---|---|
| 植物 | 葉などの植物質を利用 |
| 小さな昆虫など | 動物質の餌として利用 |
| 飼育用の餌 | 植物質・動物質の両方を考える |
つまり、
「キリギリス=草を食べる虫」だけでは、生態を十分に説明できません。
この意外性を知ると、草むらでキリギリスを見つけたときにも、「葉っぱを食べているのかな?」だけではなく、「近くに小さな獲物はいないかな?」という見方ができるようになります。
キリギリスを飼うなら?餌・ケース・注意点
キリギリスは飼育できます。
ただし、「バッタと同じように葉っぱだけ与えておけばいい」と考えないことが大切です。
飼育ケースは「広さ」と「足場」を意識
キリギリスを飼育するなら、動き回れるスペースと、体を支えられる足場を用意します。
草むらで暮らす昆虫なので、ケースの中でも自然に近い立体的な環境を作ると観察しやすくなります。
また、ケース内の蒸れを避けるため、通気性も確認しましょう。
餌は植物質+動物質を考える
キリギリスは雑食性なので、植物質だけに偏らないことが重要です。
飼育情報では、野菜などの植物性の餌に加えて、動物質の餌や昆虫用フードなどが紹介されています。
複数飼育では共食いに注意
キリギリスは肉食傾向があるため、狭いケースで複数を飼育すると、個体同士が攻撃し合ったり、共食いしたりする可能性があります。
特に脱皮直後の個体は体が柔らかく、ほかの個体から襲われやすい状態です。
初めて飼う場合は、まず1匹を落ち着いて観察するほうが管理しやすいでしょう。
捕まえるときは無理につかまない
キリギリスは強い顎を持っています。
啓林館の教材でも、触る際には噛まれることに注意するよう説明されています。
観察するときは、手で強く押さえつけるより、ケースなどへそっと移す方法が安全です。
✍️ 専門資料からの一言アドバイス
【結論】: キリギリスを飼うなら、「餌を入れる」だけでなく「キリギリス同士が接触しすぎない環境」を最初から考えておきましょう。
飼育情報では共食いが注意点として挙げられています。初めて飼う場合は、複数飼育よりも1匹を観察するところから始めると、食事や行動の変化も追いやすくなります。
キリギリスのオス・メスと産卵・一生
キリギリスのオスとメスを見分けるとき、もっとも分かりやすいポイントの一つがメスの産卵管です。
オスとメスの違い
メスの腹部の先には、卵を産むための産卵管があります。
一方、オスにはメスのような長い産卵管はありません。
そのため、姿をじっくり観察できる場合は、腹部の先端を見ると雌雄を判断する手掛かりになります。
啓林館の教材でも、キリギリスのメスには長い産卵管があることが紹介されています。
メスは土の中に卵を産む
公益財団法人日本科学協会の観察記録では、キリギリスのメスが産卵管を土に差し込み、土中に卵を産む様子が記録されています。
同資料では、約2.5cmの深さから卵が見つかり、卵は幅約1mm、長さ約5mmと記録されています。
また、卵の一部は翌春ではなく、2〜3年後に孵化することがあると紹介されています。
これはキリギリスの生活史を理解するうえで、とても面白いポイントです。
「夏に成虫が鳴いている」という姿だけを見ると、キリギリスの一年は短く感じられます。
しかし実際には、
卵 → 幼虫 → 成虫 → 交尾・産卵 → 卵
という長いサイクルの中で生きています。

よく似た虫との違い
キリギリスを探していると、「これってウマオイ?」「バッタじゃない?」と迷うことがあります。
ここでは、まず大まかな違いをつかみましょう。
| 虫 | 見分けるときの着眼点 | 観察のヒント |
|---|---|---|
| キリギリス類 | 大型で長い触角。草地で特徴的な声 | 日中の鳴き声と草地を確認 |
| ウマオイ類 | 細長い体と長い触角 | 鳴き声・活動時間を合わせて確認 |
| バッタ類 | キリギリス類より触角が短い種類が多い | 後脚や体型を見る |
| コオロギ類 | 地表付近で活動する種類が多い | 生息場所と鳴き声を見る |
ただし、この表は最初の切り分け用です。
「鳴き声が似ているから」「緑色だから」という1つの特徴だけで種を決めるのは避けましょう。
ヒガシキリギリスとニシキリギリス
さらにキリギリス類の中でも、ヒガシキリギリスとニシキリギリスのように近い種類があります。
環境省の資料では、ヒガシキリギリスとニシキリギリスについて、分布域や体の特徴などが整理されています。また分類については地理的変異など未解明の部分も残されています。
環境省の「いきものログ」では、現在もヒガシキリギリスを Gampsocleis mikado、ニシキリギリスを Gampsocleis buergeri として個別記録しています。
一方で、分類データベースによって学名の扱いが異なる場合があります。
そのため、記事では「どの学名が絶対に正しい」と単純化するより、使用している資料・分類体系によって表記が異なることがあると説明するのが誠実です。
よくある質問
Q. キリギリスはバッタですか?
キリギリスはバッタ目に分類される昆虫ですが、バッタ科ではなくキリギリス科に属します。
つまり「広い意味ではバッタ目の仲間だが、いわゆるバッタとは別のグループ」と考えると分かりやすいでしょう。
Q. キリギリスは何を食べますか?
植物質だけでなく、昆虫などの動物質も利用します。
成長段階によって肉食傾向が変化することも報告されています。
Q. 鳴くのはオスだけですか?
野外で特徴的な鳴き声を出すのはオスです。
環境省の市民参加型調査でも「鳴くのはオスだけ」と明記されています。
Q. キリギリスはどこにいますか?
日当たりのよい草原などで見られます。
特に丈のある草地は、キリギリス類にとって重要な生息環境です。
Q. なぜ声は聞こえるのに姿が見えないのですか?
キリギリスは警戒心が強く、人の気配を感じると草の根元へ逃げ込むことがあります。
そのため、声の方向へ一直線に近づくより、少し離れた場所で立ち止まり、再び鳴き始めるのを待つほうが観察しやすい場合があります。
Q. キリギリスは飼えますか?
飼育できます。
ただし、植物性の餌だけでなく動物質の餌も考えること、複数飼育では共食いに注意すること、通気性や足場を確保することがポイントです。
Q. メスはどう見分けますか?
腹部の先にある長い産卵管が大きな手掛かりです。
まとめ:キリギリスを見つけたら、まず4つを観察しよう
キリギリスについて覚えておきたいのは、名前だけではありません。
実際に草むらでキリギリスを見つけたら、
①鳴き声
②触角
③翅や体の特徴
④生息している場所
の4つを観察してみてください。
特に「ギーッチョン」という声が聞こえてきたら、すぐに草をかき分けるのではなく、少し離れて静かに待ってみるのもおすすめです。
キリギリスは、人の気配を感じると草の根元へ逃げることがあるからです。
そして、見つけた一匹を「緑色の大きな虫」で終わらせず、
なぜ鳴くのか?
何を食べるのか?
どんな草地で暮らしているのか?
オスとメスで何が違うのか?
と一つずつ観察していくと、キリギリスの世界が一気に身近になります。
環境省も、キリギリス類を市民参加型の昆虫分布調査の対象としており、鳴き声による記録も活用しています。
次に草むらから「ギーッチョン」と聞こえてきたら、ぜひ耳だけで終わらせず、声の主がどんな場所で、どんな姿で暮らしているのかまで観察してみてください。
参考文献・主要資料
- 環境省「代表種20種の生態情報(キリギリス類)」— 分布、生息環境、生活史、識別に関する基礎資料。(環境省)
- 環境省「緑の国勢調査!みんなで虫らべ2025」— キリギリス科を対象とした市民参加型昆虫調査。(環境省)
- 環境省「みんなで虫らべ2025」対象種資料 — 鳴き声によるキリギリス科の報告方法。(環境省)
- 国立科学博物館・サイエンスミュージアムネット「ヒガシキリギリス」— 自然史標本情報。(国立科学博物館)
- 直翅類.jp「キリギリス」— 分布、発生時期、生態、観察上の特徴。(直翅類.jp)
- 公益財団法人日本科学協会「キリギリスの産卵を観察しよう」— 産卵・卵の観察記録。(日本科学協会)
- 啓林館「いきものずかん:キリギリス」— 初学者向けの特徴・雌雄・飼育情報。(啓林館)
- 生き物情報ナビ「キリギリスの飼い方と生態」— 飼育、餌、共食い等の実用情報。(生き物情報ナビ)
- コトバンク「キリギリス」— 百科事典的な分類・形態・生態情報。(コトバンク)
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